ト書きという真実のカラクリ|シナリオ教室の劣等生

ト書きという真実のカラクリ

 

脚本では人の動き=動作を伝える手段としてはこの ”ト書き“ に書くしかない。

 

しかも、書き方としてはあくまで無機質に、単調に、感情を込めないで、棒のように書けと教わる。

 

基本的に動作指示なのだから分かり易く簡潔に書くべきなのだ。

 

でも、感情表現含め、表現はセリフとト書きの2通りしか脚本家には与えられていない。

 

 

 

ウソつきセリフと正直者のト書き

 

前述のセリフのカテゴリーページにて、”セリフは大嘘つき” と申しました。対して ト書きに書く事はシンプルに見た目の真実だけしか書けません。

 

あくまでキャラクターの動きとか、状況の補足とか、シーンに必要な情報を淡々と書くだけです。

 

ここに曖昧な感情などは入りません。そんなようなシナリオを管理者も書いた事がありますが、
「小説みたい」 と馬鹿にされます。

 

 ”小説みたい” は褒め言葉ではありません。
”シナリオにあらず”と言われているのです。勘違いしないようにしましょう。管理者は勘違いしていました。

 

現代のエンターテイメントにおいて、音声が伴わないものは無いので、どうしても見た目聞いた目で派手なセリフに注目されがちですが、何を隠そうト書きこそ表現の根幹であるのです。

 

その理由は映画の歴史から見ても明らかな通りです。
昔はト書きだけ、つまりキャラクターの動作だけで人を魅了していました。
セリフは後付けに過ぎません。

 

それは今も昔も同じで それでも人には十分伝わるのです。

 

2次元よりのこのサイトは、アニメの要素が声や音楽に大きく左右される現代なのでセリフをあえて先に書きましたが、本来の表現手法だったり劇だったり演出だったり、エンターテイメント性からいったら このト書き=キャラクターの動作に物語のキモがあります。

 

それはアニメでも変わりません。

 

でも、アニメのあまり得意分野でもないかもしれません。

 

圧倒的に実写の方が優れているというか、観客に伝わるバイト数が違いすぎます。
数値化出来るものでもないのですが、リアルの俳優さんの気持ちのこもった繊細な動作の機微なんて、物理的に ”絵” では描ききれません。

 

 ”絵” しかもデフォルメされた抽象画です。言ってしまえばマンガです。動いてもリミテッドアニメです。1秒間に8コマしか動きません。
その動作に繊細な表現を求めても叶わないと思います。

 

あえて自虐的に書きましたが、実際の矛盾とお気づきでしょうか。

 

物語を語る上で根幹である ”ト書き” はアニメだろうと実写であろうと変わりありません。でも表現という意味ではアニメは適していません・・・でも根幹なのです。

 

別にアニメ脚本はアニメが表現手法として優れていないからテキトーでいいよ、という話ではありません。
確かに管理者の子供の頃の作品を今見ると、かなりテキトーです。それは否めません。

 

されど技術の進んだ現代のアニメの作りは それこそ実写と違った表現を獲得しています。

 

理屈はともかく、きれいに描写しているじゃありませんか。それも現実にはありえないシチュエーションでも違和感なく、です。

 

ト書きで表現されるものは真実です。見た通りのそのままなのですが、その ”見た通り” が何を意味しているかがト書きの本質です。

 

見た通りはそのままです。キャラクターもその通りの芝居をします。でもその芝居は何を伝えているか、どんな意味合いを観客に伝えているか、がないとト書きに書く意味をなさないのです。

 

その意味が ”ウソ” なのかもしれません。

 

正直にキャラクターの動きをト書きに書きます。でもその動作の意味はウソ=フィクションだったりします。
これがト書きの面白い所です。

 

分かり難いですよね。

 

ト書きには意味が必ず存在します。それも裏の意味です。表に現れる動作とは矛盾するかもしれません。
いや、矛盾させないと面白くなりません。

 

好きな男の子に本当は抱きつきたいのに、あえて殴ります。

 

ト書きには ”ケイコ、勢いを付けながらグーでマナブの左頬を殴る” などと書くだけです。

 

その意味は照れ隠しかもしれませんし、戒めかもしれませんし、恨みつらみかもしれません。その意味は前後の脈絡によります。

 

ト書きの作者が狙った本来の意味は前後の文脈から演出します。そのシーンだけで完結する (意味が伝わる) 場合もありますが流れがあってそのシーンの動作に繋がるといったイメージになります。

 

ですので、シナリオは流れが重要になるのです。決してひとつだけのシーンの塊ではありません。流れと繋がりで意味を提示するのです。

 

感覚的で恐縮なのですが、ト書きとはキャラクターの感情を表現するにあたり 直接ではなく遠隔操作して結果的に意味が通るような動作を指示します。
これを間接表現なんていいますが、やり口が多すぎて 一口で “間接表現” では片付けられません。

 

管理者の説明が下手なのですが、分かり難ければとりあえず ”動作には必ず意味を持たせる” と覚えていてください。
逆に意味の無いト書き=動作は書いてはダメなモノですし、実写では俳優さんに嫌われます。

 

よくシナリオの最後の一文に ト書きで ”そしてケイコは一筋の涙を流す” みたいな終わり方をする人がいます。
でも俳優さんはそのところをツッ込みます。

 

 「なんで、涙を流すの?」

 

そのシナリオにはその意味が書かれていません。一連の流れから理解できる涙の意味がありません。
ただキレイっぽい終わり方を作者が粉飾しただけで 問われて答えられるような意味はありません。

 

俳優さんは言います。

 

「泣けと言われれば泣けます。ただし、それに意味が無ければやりたくはありません」

 

さすがプロフェッショナルです。シナリオを書いた人は反省すべきですし、実際に多いのです、こんな稚拙な描写する人が。
大事な事だからもう一度言います。

 

 ”意味の無いト書きは書いてはダメ” なのです。

 

セリフにも同じ事が言えます。意味が無ければつまらなくなります。

 

意味、理由、動機、わけ、それらは感情と相まって物語を加速し面白くしてくれます。それらが考えられていないト書き、セリフはシナリオに対して ”余計なモノ” とされてしまいます。

 

映像のコンテンツはあまり時間のボリュームがありません。表現するにはとても長さが足らないのです。余計なモノを描いている余地はありません。
意味の無い、意味を持たせられない動作やセリフは推敲にて淘汰されます。

 

ですから見た目だけを考えるのではなく、伝わる意味を考えるのが脚本家なのです。伝わる意味を考えた動作を見た目のまま、ト書きに書きます。

 

ややこしいですね。

 

 

ト書きだけでは足らない

 

脚本は映像設計の1発目です。今まで何も無い所から作品を考えていくわけですが、芝居を考える時にどうしてもト書きだけでは書ききれないということが起こります。

 

それはシナリオを考えていると必然で、頭の中でシーンを組み立てていると 「こんな一文じゃ伝えきれない」 と感じてきます。

 

管理者もよくやりますが、脳内スクリーンに勝手に決めた断片映像を映写して、それをシナリオに文字として書き写します。

 

シーンのイメージが固まっているほどこの ”伝えきれない症候群” に襲われますが、だからと言ってト書きにはやはり余計な事は書けないのです。

 

何と言いますか、言葉が足らない、表現が貧層、ボキャブラリーが足らない・・・そんな感覚に襲われてしまいます。
せっかくのシーンがもったなく思えてしまうのですが、それでいいのです。

 

ト書きにごちゃごちゃ書く人もいます。それこそ音楽まで指定したりしますが、共同作業の映像制作ではよほどの理由が無い限り、ご法度です。やるべきでありません。

 

脚本家はいわばお話しの大枠を作ることに価値を置かれています。詳細なところまで求められていません。
だからといって おおざっぱではいけないのですが、細かい演技指導や演出はその担当者がちゃんと後に控えています。

 

どうしても譲れない演出プランがあるのならそういう人たちとコミュニケーションを取ればいいだけです。

 

シナリオに後のスタッフの仕事まで反映させてはいけませんし、作品1発目の脚本家はむしろ後工程のスタッフの腕の見せ所を用意することも必要だと思われます。

 

シナリオは文字表現です。どこまで行ってもシナリオの内は文字表現であり、それは映像にする為に存在するわけですからどこかの段階で ”変換” されます。

 

どちらかというとこの変換作業の方が難しいと管理者は感じます。その変換作業は主に絵コンテや演出でなされるのですが、どこまでいっても文字表現しかできない脚本家では立ち入れない世界になるのです。

 

いくらト書きに詳細に書いたところで、それでも映像にはなりません。映像に変換する作業は、脚本のト書きにちょこちょこっと書けるほど簡単ではないのです。
ですから、それは専門家にお任せします。音楽もイメージとしては持っていても音監に任せます。でしゃばりません。

 

それより脚本家は本来のお話しの組み立てに尽力します。結果的にですが、シナリオはキャラクターの魅力付けもさることながら、構成に重きを置かれています。お話しがどうなっていくのか、が重要なのです。

 

ト書きでは特にお話しの流れがダイレクトに反映します。キャラクターの行動はウソをつきません。正直者なので物語の流れに逆らわないト書きの一連の流れが重要なのです。

 

実際のところト書きだけでは伝えきれません。それは当たり前なのです。それも制作上必然な事なので、不満があるのならそれこそ脚本家辞めて小説家になるか、絵コンテが切れるようになるかしかありません。

 

ト書きに書けることはとても限られています。しかもその意味するところは、書けません。
それで読む人に伝わるような設計をしなければばりません。

 

それはもう、謎かけと答え合わせを繰り返すようなものです。

 

ですが、この書かずして意味を伝える、というところが脚本の面白い要素のひとつなのです。

 

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第一章 シナリオ構築の全体像
  • 参考に過ぎません
  • 必要な作業とは
  • 小から大へ向かう
  • この作業に取り組める人とは

第二章 実作業に取り組みましょう
  1. テーマの設定
  2. ログラインの決定
  3. お話しの骨格を設定する
  4. キャラクターを作ってみよう
  5. プロット出しでアイディアを量産する
  6. 箱書きで構成を検討する
  7. 下書きシナリオ執筆
  8. 推敲と清書

第三章 お話しの作りはお手本からマネをする
  • 現実的な“マネ”とは

第四章 コンクールに応募する場合
  • 応募要項は鉄板ルール
  • スケジュールに気をつけよう
  • 添付するあらすじについて


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