Another|シナリオスキル|ホラーの要点

今回のお題は

 

「Another」から読み解くホラーの要点、です。

 

綾辻行人さん原作モノのサスペンスホラー作品です。

 

実写映画版も作られました。ご覧になった人も多いのではないでしょうか。

 

アニメ版は2012年に放映されました。

 

監督は水島努さん、シリーズ構成、脚本は檜垣亮さんです。

 

キャラ原案はいとうのいぢさんで可愛いキャラを書く人ですが、秀逸なのがP.A WORKSで活動されている石井百合子さんのキャラデザです。

 

怖いお話しなのに清楚で品のいいデザインでとてもきれいに描かれています。

 

アニメでも怖いお話しを描く場合には、おどろおどろしい描写で暗く描かれる場合も多いのですが

 

楳図かずお作品みたいに。

 

でもこの作品は線も太くて愛くるしいキャラクターが惨劇に巻き込まれていく様が返って怖さを演出しています。

 

そうなんです。

 

ホラーとかサスペンスなどはまずシナリオより絵面に特徴があります。

 

明るいより暗い、白より黒、晴れより曇天か雨、昼より夜、赤さびより血痕・・・みたいな“色”が最初に目に入ります。

 

あと何といっても“音”ですよね、音。

 

効果音や音楽はシナリオの担当外ではありますが、この作品の導入部にはこの音が演出効果として大変有効に働いています。

 

このような描写がこの作品にも他のホラー同様共通点が見て取れます。

 

今回はいくつかのキーワードでお話ししていきましょう。

 

ホラーに必要な要素その1

 

「違和感」

 

主人公の榊原恒一は母方の実家に、一時的に身を寄せて地元の夜見山北中学校に転校してきます。

 

転校してきた恒一のクラスは3年3組でしたが、初日から普通じゃない「違和感」を感じます。

 

恒一の目線は観客と同じ目線です。

 

いの一番にこの違和感が描かれています。

 

そう、ホラーの世界は、普通じゃいけないのです。

 

普通じゃない世界に我々と同じ目線の主人公が放り込まれて、巻き込まれて、観客と共有します。

 

更にヒロインの見崎鳴(みさきめい)の存在が違和感を加速させています。

 

作品をご覧になれば分かりますが、可愛いキャラでなんですけれども尋常な雰囲気ではありません、この鳴ちゃんは。

 

よく“謎めいた”なんて表現しますがその謎とは「違和感」なのです。

 

ホラーに必要な要素その2

 

「不安」

 

3年3組の生徒達は何かにおびえています。

 

その、“何か”の正体が分からない、理解できないので得体の知れないモノとなりそれが人の「不安」に繋がります。

 

大概ホラーの場合はその“何か”が死に直結しています。

 

もしかしたら自分が死ぬかも知れない、

 

なんで死に至るのかも分からない

 

精神的にとても不安定な状況に置かれています。

 

ホラーに必要な要素その3

 

「現象」

 

不安を的中させるような出来事が起こり始めます。

 

違和感や不安を立証するような現象が実際に起こります。

 

つまり人が死にます。

 

それもただ死なないで極端な死に方をします。

 

血がドバドバ描かれます。

 

死んだ当人の感情よりも、それを観察した人の感情に訴求してあまりあるような死に方をしてしまいます。

 

私個人的にはこの人の死に方の描写でその作品のクオリティが図れると考えます。

 

どんな死に方をさせるのでしょうか。

 

そこんところは作者のセンスが問われます。

 

それは死んだ当人より周りのキャラクターがどう感じるのか、に比重があります。

 

そしてサブキャラクターがいろんな死に方で1人死に、2人死に、

 

小から大へ向かって加速していきます。

 

ホラーに必要な要素その4

 

「警告」

 

予告とも取れる現象も起き始めます。

 

現象の犯人から犯人の意思とも取れる現象も起き始めます。

 

夜見山市内から逃げようとすると、それを阻んで死に至らしめます。

 

周りのキャラクターはそれを警告と捉えます。

 

そして更にパニックに陥ります。

 

恐怖とは逃げ場がない状況で起こります。

 

逃げ場が担保されていては恐怖は演出できません。

 

Anotherでは現象の正体は明かされません。

 

この作品の面白いところでもあるのですが、発端はあれど現象の正体は明かされません。

 

宇宙人でも無く、神様でも悪魔でも無く、終始明かされないのが見ている人の想像力を最後まで掻き立てます。

 

だから絶えず緊張感が漂うような設計がなされています。

 

この手法はシナリオ的に面白いと感じましたし、使えるアイディアです。

 

サスペンスやホラーは引っ張ってナンボです。

 

最後まで、いや、終わっても謎を残して観客に余韻を持たせています。

 

結局、あの現象は何だったのか、そんな感想を感じさせてくれます。

 

だからスティーブンキングのようにホラーのタネは必ず明かさなければならないモノでもありません。

 

本当は明かさなければ観客は納得しません。

 

でもそれは必ず、ではないのです。

 

シナリオに“必ず”はありません。

 

特にアニメの表現における拡張性とはリアルの実写の比ではありません。

 

バッタバッタとキャラクターが死んでいく描写も、実写ではリアリティが感じられなくて結局冷めてしまいます。

 

実写ではデフォルトでリアリティが描けますので、非常識な描写であると逆に説得力が削がれるという現象が起きがちです。

 

現実ではそんな人がたくさん死ぬ状況は災害でも起きない限り現実になりません。

 

その点、アニメとはデフォルメです。

 

かなりオーバーに表現して何とか感情が伝わる媒体です。

 

たくさん人が死ぬ状況もアニメならほどよく伝える事が出来るのです。

 

特に絵がきれいだと描写に箔が付きます。

 

ただ、実写でもアニメでも人の死を描く場合にはちゃんと理由が内包されていないとその作品は確実に薄っぺらくなります。

 

ただキャラクターを死なせている作品はもう、ペラッペラです。

 

その作者はなにも考えていないとすぐに分かります。

 

段階的に死んでいくキャラクターも、その“死”に理由が無いとやっぱり見ている人は冷めてしまいます。

 

アニメで絵だから、何でも勝手に描けるからといって、そのあたりを疎かにしてただ死なせるだけ、だと確実に面白くなりません。

 

そんなアニメも最近多いと思いますが。

 

何を観客に感じさせたいのか、

 

どういった恐怖を与えたいのか、

 

その意味するモノとは・・・

 

そんな事も、Anotherからは読み取ることが出来るのです。


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