シナリオ脚本の『柱』基礎
シナリオに書くことの一発目には必ず『柱』が来る。
シナリオは「柱単位」で書き進めるものであるから「柱」がない、ということはない。
視覚に訴求する映像の構造上、被写体の場所指定をしなければ撮影できない。
柱は単純だが、無視してシナリオは書けない。
シナリオ脚本の柱【基礎知識編】
まずは柱の基礎から解説します。
まずは柱って「書く」とは言いません。
柱は 「建てる」 と言います。
柱だけにそう呼ばれます。
柱の記述ルール
柱の書き方、記述のやり方概要は以下の通り。
(実際の書き方例は実践編で紹介します)
- 原稿用紙ペラ一段目から書く
- 一段目には柱の記号 ○ を打ってから場所を書き入れる
- 場所は大枠の指定を書いてから黒点を挟んで少しだけ細かい指定を書き込んで、必要なら内、外などの詳細を書く
- 必要ならば終端に括弧書きでおよその時間帯を書く
- 柱が変わる(シーンが変わる)場合には、ペラ一行空行にする
- ペラを改ページした場合は柱の切り替わりでも空欄は空けずペラ一行目から書くことができる
- 柱の中で書き切れないような細かい場所指定はト書きの冒頭に書く
- 天気はト書きに書く
- 柱には大枠の場所指定しかできない、ペラ一行以内で収まる程度
柱の書式は至って単純なものです。
まず柱の記号として一番上のマス目にまるっとします。
その下に大枠の場所を書いてその後に必要なら括弧書きで大体の時間帯を書きます。
これだけです。
すんごいシンプルであることがお分かりになると思います。
柱の指定ではあんまり細かいところまでの指定はしません。
せいぜい多くて3段階までの指定しかできません。
必要な場合だけ3段階くらいまでで細分化します。
例えば今の私のシチュエーションを柱に書くならば、
最初にまるっとして 「ジンノ家」 として一段目に書きます。
黒点を入れてから 「ヨンキチの部屋」 など、少しだけ細かい指定を二段階目にします。
3段階目には 「内」 とか 「外」 の指定をします。
3段階目には、例えばシーンが家の玄関の場合、その玄関の内側で撮影する画なのか、外側なのか、同じ玄関の指定でもどっちともとれる場所があります。
そういった場合に内、外の指定します。
学校の教室のシーンでも教室の中なのか、外側なのか、指定する必要があるなら同じように2段階目の下に黒点を挟んで内とか外などを書きます。
三段目の下に必要なら大枠の時間帯を括弧書きで書きます。
今の私のシーンですと、今は夜ですので大枠の時間指定として(夜)とします。
この括弧書きに書く時間指定も大枠の時間帯しか書けません。
何時何分とは書けません。
朝だったら(朝)、夕方だったら(夕)と書きます。
真っ暗な夜でしたら(夜)、薄明の早朝なら(早朝)と書きます。
時間してもこの程度しか書けません、せいぜいこの4通りです。
なんでこの程度でいいのかというと、撮影する場合、場面の色が違うなら指定してください、ということです。
キャメラに写る背景の色が朝と夜と夕方と早朝とでは当然違います。
ですので時間帯による色に違いがあるのなら指定しなければなりません。
デフォルトで何も書かなければ晴天の昼間と解釈されます。
ちなみに柱に天気は書きません。
柱はシーンの場所指定をするところであり、状況指定はト書きでするものです。
天気の指定があるならト書きに書き入れます。
柱に書ける分量ってこの程度しかありません。
このように柱というのは大枠しか書けませんが、場所についてもっと細かい指定をする場合はト書きの冒頭に書き入れます。
あくまで柱とは大枠でしかありません、それも無機質に場所だけの指定を単に書くだけです。
柱を書く場合の○ですが、この○ってシナリオが完成して撮影監督に渡るとこの○の中に撮影の順番を書き入れます。
ですから○すると行きには大きく元気よくまるっとしてください。
数字が入らないような○はしてはいけません。
こんな感じで原稿用紙の中では柱が並んでいきます。
この場合の並べ方ですが書式的にルールがあります。まず・・・
柱同士はくっつけて書かないで柱と柱の間には空行を一行あけます。
実際には柱の次にト書きやセリフの記述があったりなかったりします。
柱の下にぶら下がるト書きやセリフは空行を挟みませんが柱の切り替わるときには必ず空行一行空けます。
ただし柱にぶら下がるト書きとセリフの終端が原稿用紙の10行目でキリ良く終われば、改ページしたペラの冒頭に空行を挟む必要はありません。
ペラの一行目を空行にしていいルールはありません。
そのまま一行目の右上からまるっと始めて構いません。
次に同じ場所で二段目の細かい指定を変える場合、一段目の大枠の指定に関しては「同」として省略ができます。
これは一段目の大枠の指定が直前の柱と同じ時に限ってこのように書けます。
私のシーンですと、神野家のヨンキチの部屋からほのかの部屋へ場面が移る時などに神野家の部分を「同」として省略出来ます。
柱はあくまで大枠の指定しか出来ません。
でも実際にシナリオを書いているとどうしてももっと詳細な場所指定や天気などのシチュエーションを指定したくなります。
その場合、書いちゃダメということではありません。
そんなときにはすべてト書きの冒頭に書き入れます。
これはト書きのレクチャーでも言いますが、柱で指定しきれない撮影に必要な要件は全部ト書きに書いてしまいます。
柱は非常に無機質で単に大枠の場所指定を行うためだけに建てられます。
だからよっぽど長い建物名などを盛り込まない限りペラ2行になることはありません。
例外もありますがそれくらいシンプルなのが柱なのです。
場所は必ず見えるものではない
シナリオにおいて柱はマストだよ、とお話ししました。
映像や画像というものは場所がなければ写すこと、撮影が出来ないため、と申しましたが、
その映像や画像そのものに場所が写っていないこともあります。
例えばコンビニの前に設置されている証明写真って、画像そのものはブルースクリーン越しに人物が写っていますよね。
こういった映像の中に場所を指し示すものが写っていない場合でも必ず指定をします。
場所は、例え写っていなくとも、見えなくとも指定できますし、指定しなければなりません。
この場合、柱として『○コンビニ前・撮影機(内)』のような指定を行います。
柱は必ずしも見えるもの、必ずしも写っているものではありません、それでも場所が存在しないと言うことはあり得ません。
柱を建てないと撮影そのものができませんし、撮影されると言うことは何らかの場所があると言うことです。
ですから柱は必ず建てなければなりませんし、それがシナリオの役割になっています。
シーンとカットを間違えないように
役割繋がりの話ですが、柱の指定、つまりはシーンの場所の指定はシナリオライターが決めなければなりませんが、撮影現場でよく使われるカットの指定は基本的に出来ません。
カットとは、同じシーンの中で画角を変えたり被写体を変えたりすることです。
映像は一つの場所だけの画面で出来ていませんよね。
同じ場所でもタイミングで人物のアップになったりまた戻って俯瞰してみたり、写すことでもキャメラワークやアクションがあります。
これをカット割りなんて言いますが、これらを指定するのはシナリオライターではなく監督やコンテマンや演出家の役割になっています。
シナリオは映像の設計図、指示書の役割もありますが実際にはお話そのものに関すること、いわゆる文芸の専門で撮影作業そのものの担当ではありません。
撮影する大枠の場所指定しかできません。
それがシーンの指定、つまりは柱を建てることとなります。
カットとはシーンを細分化したものです。
それはそれで他の専門家がやっていることを知っておいてください。
また、テレビや映画を見ながらこの映像がシーン、ここからここまでの映像がカットというような判別ができるようになってください。
一般の視聴者はただ流れる動画を見続けていることだけしかやっていません。
それでは上手く柱が建てられませんので、大体でもいいのでシーンとカットの違いがつけられるようにしてください。
これって決して難しくないのでやってみてください。
参考記事: 柱を決めて話を始める