シナリオ、脚本のキャラクター造形U
モブキャラとメインキャラクターとの違いは描かれる深度にある。
物語の中で一番描かれるのが主役、メインキャストだ。
故にメインを描けないとそれ以下は描けない。
魅力ある、感情移入できる造形とはなにか。
シナリオに描くキャラクターの魅力
キャラクターを構成する要素ってたくさんあるのですが特に重要な要素が2点あります。
人物の魅力とはこの二つがあって魅力となります。
一つは憧れ姓、もう一つは共通性です。
共通性とは弱点のことです、弱みですね。
この二つがそろって人物の魅力と成り得ます。
先に造形して頂いたあなたのオリジナルキャラクターはおそらく一般の人から発想して頂いたと思われます。
そしてなんとなく不足を感じたことでしょう。
やっぱりお知り合いの方そのままでは使えない、というか足らないので魅力を付け足していきます。
平凡なキャラクターを非凡な存在にするには憧れ性と弱点を付けなければ始まりません。
憧れ性と共通性
まずは憧れ性を付けていきます。
あなたのオリジナルキャラクターを発想するときに特徴を書き出してみて、と言いましたがその特徴の中のいいところ、素敵なところ、尊敬するところや見習いたいところ、いわゆるポジティブポイントをデフォルメします。
デフォルメとは拡張とか誇張という意味です、要するにオーバーにしてみます。
オーバーアクションにしてみます。
見える部分ですね、アクションとして動作やセリフとしてしゃべることも含まれます。
もう一つの共通性、弱点もデフォルメしてみます。
オリジナルキャラクターの特徴から、もうちょっとこうしたほうがよくね、みたいな部分であったりその癖あり得ないだろ、といういわゆるネガティブポイントをデフォルメします。
この二つの要素をバランス良く与えると感情移入できる魅力的なキャラクターとなります。
ただバランスに気を付けてください。
憧れ性だけだと、とっても非現実的でイヤミなキャラになってしまいますし、共通性だけでもダメ人間になってしまいます。
バランスがとれて始めて魅力が出せるようになります。
ファーストシーンってイメージしてもらいましたよね、そのシーンに乗っかっているオリジナルキャラクターに誇張された憧れ性や共通性を実際にやらせてみます。
この憧れ性、共通性といったものを物語の進行中、随所にちりばめていきます。
で、こういった憧れ性や共通性も人ひとり一個だけというわけではありませんよね。
あそこもいいしここもいいし、あそこもダメだしここもダメみたいに複数個思いつくと思います。
そのアクションからリアクションをイメージしたり展開を読むことが出来る、
キャラクターが展開を作れること、それがオリジナルの概念とマッチするのです。
当然あなたのオリジナルキャラクターが動くその作品はあなた独自のものとなります。
誰にも真似できないあなたのオリジナルストーリーが書けてしまいます。
キャスティングボート
シーンを思い浮かべられたとしてからのお話ですが、そのシーンにはキャラクターが載っているはずです。
キャラクターは作られるシナリオの品質を左右するものでもありますので、簡単に決められないし決まりません。
ひとりだけの人物造形をやってみましたがましたが、多人数になってもやることは同じです。
ひとりでも複数の人物でも造形に掛かる手間暇は変わりません。
それでもキャスト全員主人公みたいに作らなければならないのかというと、そうではありません。
主人公を筆頭に物語の序列に従って描かれる要素というものは薄くなっていきます。
一番細かいところまで描かれるべきは主人公だけです。
それ以下の脇役、端役は序列上位のキャラクターと比べて描かれる分量は必ず少なくなります。
必然的に細かい描写までしないで済むようになります。
というか、細かいところまで描写しても出現頻度すら少なくならざるを得ないので、必然で序列上位のキャラを超えられないのです。
ハブという言葉をご存じでしょうか。
自転車の車輪のスポークが集まっている中心部分をハブと言います。
主人公は物語におけるハブということになります。
お話の中心ですね。
主人公はありとあらゆる生活のシーンで登場します。
脇役以下のキャストは主人公の生活の中の、ある一部にしか登場機会がありません。
自転車の車輪で言えばスポークの一本です。
この仕組みは私たちリアルの生活を思い起こせばそのまんま描くことが出来ます。
私たちだって家庭の顔、職場の顔、男としての顔、親としての顔のようにたくさんのシチュの中で使い分けています。
主人公であればそのような多面的な顔を描かなければなりません。
脇役であれば主人公の中のある一面だけしか描くことが出来ません。
キャラクターの個性付けとはこうして濃淡を付けることができます。
最近の映像コンテンツでは昔に比べて、脇役以下にも主役級の個性付けを行っていて品質を上げてますが、それでも物語全体から見たらやっぱり主人公が一番描かれる構造は変わっていません。
たったひとりのキャラ造形をやってみましたが、造形手法そのものは変わりません。
手法そのものは変えないで使うシーンに限って必要な描写だけ与えます。
脇役以下が登場するシーンに必要なだけの個性付けを行っていきます。
キャラクターについてはここで伝えきれないほどの要素だったり考え方、やり方があって言い切れませんが、やり方の1例として・・・
キャスティングボートというものを作ります。
登場人物の人と成り、を想定したイメージ面での人物表を作ります。
キャスティングボートには人物のイメージを書き込んでいきますがどのようなことを書くのかというと、
名前や年齢、性別といったパーソナルデータの他に主人公との相関性や容姿だったり動作上の癖であったり、物語における立ち位置などをイメージとして書き出します。
造形の最低条件
造形しなければならないような人物はあくまで作者さん自身がそのキャラクターのリアクションについてある程度予測できること、これが前提条件です。
キャラ造形とは、ちょっとわかりにくいかも、ですが本質だけいうならば、前提を踏まえた上で、
あとは見た目やしゃべること、動作に一つか2つくらい、そのキャラクターらしい癖や特徴を与えておけば、
キャラクターは物語の中で勝手に演技してくれるようになります。
作者さんがキャラのリアクションの先読みができる造形を行っていれば、そのキャラクターは有機的に、勝手に演じてくれるのです。
このことは初心者の方には理解できないかも知れませんが、端的にキャラ造形をどのようにして作るべきかの本質論になります。
キャラクターが決まればあとはキャラをシーンに載せて演技させてシーンを確定させていきます。
勝手に演じるキャラクターとは
キャラクターって作るものではありません。
それは私たちも同じなはずです。
あなたの個性は誰かから与えられたものでしょうか。
他人から作られたものでしょうか。
親御さんから?学校の先生から?
それは影響を受けたかもしれませんが、あなたの個性はあなたが生きてきた中で醸成されてきたものだと思います。
それも唯一無二の個性です。
あなたと同じ個性の持ち主は、この世にいません。
一億人いたら一億通りの個性があります。
キャラクター造型もその原則に従います。
キャラクターイメージでシナリオが与えるものとは最も原則的な要素だけです。
男とか女とか、若いとか老いているとか、
あとはその基本要素に、そのキャラクターらしい動作や癖をひとつふたつ三つぐらい設定しておくだけです。
そのキャラクターらしい、見える部分、セリフとして聞こえる部分を与えておくだけなんです。
そしてこれが重要なんですが・・・
造形したキャラクターを 人として、認める事、なんです。
キャラクターを記号として作るのでは無く、ちゃんと人物として尊重します。
そうすることでリアクションを導くことができます。
昔のアニメなんかは悪役は悪役でしかありませんでした。
現代では、それでは観客が納得しませんので、悪役にしてもちゃんと個性付けされています。
それではその個性とはどこから来るのか、
それは悪役としてその人物を尊重していなければ与える要素も思いつきません。
脇役以下のキャラ造形は描かれる深度を深くすることで、幾重にも重ねていくことで確立されます。
脇役以下は主役を超える描かれ方はしません。
でも主役と同じくらいは描いていいものです。
キャラクター造型はシナリオを書き進めていく作業の過程で増やしていくものです。
故に最初は一つか二つだけ、造形のスタータだけ設定して、あとはそのキャラクターに 『任せる』 のです。
任せるとそのキャラクターは勝手に主張するはずです。
それをシナリオに書き写します。
このイメージ、おわかりになるでしょうか。
そしてシナリオの原則を思い出してください。
キャラクターの個性であっても、それを描くこととは、
見える形、聞こえる形で表します。
私たちだって初対面の人の何を見て性格を判断していますか?
やっぱり見える部分、聞こえる部分で「この人ってこういう人」と解釈しています。