シナリオ、脚本の書式のしくみ
ここではシナリオ、脚本の書式の仕組みを紹介する。
柱、ト書き、セリフの3要素はただ綴ればいいというものではない。
書式のルールが存在する。
シナリオ脚本の書式、しくみはどうなっているのか
柱、ト書き、セリフの3要素について個別説明の前に全体的なシナリオ書式の仕組みを解説します。
シナリオに書ける3要素、柱とト書きとセリフですね。
この3要素には配置というものがあります。
ただ単に原稿用紙に書き入れればいいというものではありません。
書かれる順番や置くところが決まっています。
本当はこれを理解するには映像の特性を知らなければなりませんが、
とりあえずのざっくりとした全体像を把握してみてください。
シナリオとは柱単位で書く
まずペラに書く順番とは、シーン単位で書き進めます。
シーンとは場面のことですね、被写体を写す場所のことです。3要素で言えば柱ということになります。
シナリオはこの柱ごとに記述していきます。
そして柱の中にト書きとセリフが内包される構造になっています。
まず柱として場面の指定があって、そのなかで繰り広げられる動作や様子を表すト書きと、役者がしゃべるセリフがあります。
イメージとしては柱にト書きとセリフがぶら下がっているという感じです。
この構造はシナリオ書式でマストなものです。
シナリオ書式とは必ず場面、つまりは場所のことですね、画面に写る場所を柱として指定することから始まります。
ですから原稿用紙ペラの冒頭、1ページの右上一マス目に書くことは、柱の指定から始まります。
シナリオ上で必ず一発目に書かなければならないのが柱です。
場面である柱を建てて、その中での様子を描いて、また場面が変わって柱を建てて、その中での様子を描いて、の繰り返しになります。
柱の中に書かれるト書きとセリフは一応基本的な形としてト書きを書いてからセリフとなりますが、これは一定ではありません。
ト書きを書いてからさらにト書きになる場合もあれば、セリフの掛け合いみたいにセリフが連続する場合もあります。
セリフの後にト書きを加えることもあります。
この柱を並べる順番は映像に映る順番と同じになります、というかシナリオに書かれる順番が映像の順番になります。
シナリオとは映像の設計図、指示書なのでそうなります。
必ず柱が一発目に来るとは、映像が必ずシーン単位、場面単位で推移することからそうなっています。
ですので柱がない、柱を書かないということはあり得ません。
柱に内包されるト書きとセリフは、その柱に含まれなければ書かない、ということは普通にありますが柱を建てない、ということはありません。
書式としては、まず、この柱が必ずあって、あと残りの2要素があるということです。
その2要素、ト書きとセリフを書かないで柱だけというシーンはたくさんあります。
場所の映像だけ写して次の場面に変わる時などは、その柱に動きがなかったり役者が登場しなかったり、セリフが載らない場合、柱だけしか建てません。
映像はシーン(場所)の順番で作られます
映像とは場面や舞台を写すこと、写した場面の連続を見せて視聴者に意味を伝えるものなので、柱の順番を設計することがシナリオの役割となっています。
映像に写る被写体って、画像もそうですが何らかの場所があってその上に具体的な被写体が写っています。
ですから場所の指定がないと撮影ができないということになります。
この仕組みは映像媒体では共通の仕組みです。テレビCMでもホームビデオでもYouTubeでも同じですので確認してみてください。
ト書きとセリフの順番は固定ではない
柱は一発目に必ず指定しなければなりませんが、ト書きとセリフに固定した順番がありません。
たいがい、様子や動作をト書きで指定してから、その中でのセリフを指定するのがおよそ一般的ですが固定ではありません。
セリフの位置は、ト書きの中か、ト書きの後に来るような形ならばト書きの次にセリフとなるでしょう。
ト書きの前にセリフが来る場合とは、例えばナレーションを入れた後に場面の動作が始まるような映像の形を設計すれば先にセリフとしてナレーションが入ります。
この順番は映像に写る順番と比例します。
ですからト書きの次にセリフ、という固定解釈ではなく、あくまで作ろうとしている映像の順番に由来する、ということです。
当然、様子や動作が描写として連続するならト書きだけでペラ1枚使い切ることも珍しくありません。
セリフの掛け合いみたいにセリフが連続することも普通にあることです。
本としてのシナリオ脚本完成形
シナリオの完成とは、本文を書き終えただけではダメで、本としての体裁を整えて「完成した」といえます。
柱ト書きセリフを書き込んだシナリオ本文を書いただけでは完成ではありません。
書き終えたシナリオ本文に必要な添付書類を付けなければならないのです。
シナリオの完成形とは、
- 表紙
- 人物表
- 本文
- 裏表紙
この4点をセットを本として綴って(簡単でも製本して)、初めて「脚本」になります。
ですのでいくらシナリオ本文の内容が優れていたとしても体裁を整えていなければ、そのシナリオ本文はシナリオではありません。
ただのメモ書きの束に過ぎません。
シナリオを完成させる、書き終える、とは本としての形にしなければなりません。
この形はクライアントから「必要ない」と言われない限りシナリオ脚本においてマストなスタイルです。
コンクールに応募する際などは製本されたシナリオに加えて「あらすじ」や「作者プロフィール」などの別添付も求められます。