シナリオ、脚本の座学|シナリオ教室の劣等生

シナリオ座学映像編

座学ではシナリオを書くために必要な知識を紹介する。

 

シナリオは書き方だけ分かっていても書けない。

 

実際の執筆で、書き方のシェアは少ない。

 

今回は映像にまつわる話をしよう。

 

媒体による表現の違い

やはりシナリオをわかりにくくしているのが、文章であるにもかかわらず、シナリオに書かれることとは映像表現であること、でしょう。

 

故にト書きには文章表現でもある形容した言葉文言は書けないわけです。

 

この文章表現と映像表現の違いってなんだと思われますか?

 

小説や新聞雑誌、ネットの記事や手紙といった文章表現で書かれているものは、

 

読んで理解するもの、なんです。

 

私たち日本人は義務教育を通じて識字率リテラシーが高いので、文字を書いて読んで理解することが出来ます。

 

対して映像表現とは視覚として見て、音声として聞いて、感じるものなんです。

 

文章表現だって目で見て読むということをしていますが、映像の場合は目で見て読んではいませんよね、直接感じているはずです。

 

これが文字媒体と映像媒体の大きな違いです。

 

シナリオは映像を作るための設計図なのでシナリオに書かれることとは、文字を読んで理解できるようなものではいけない、それでは観客に伝わらないということです。

 

見せて聞かせて感じさせなければ観客には伝わらない仕組みなんです。

 

すべからく見せて聞かせて感じさせなければならないので、間接表現で表します。

 

これが映像を使って表現する手法、映像表現なのです。

 

映像は読み物と違い直感で伝えますから、文字を読む手間が省けます。

 

なんでYouTubeがはやるのか、といえば映像で見た方が楽だから、です。

 

例えば現在の時間を示す場合でも、シナリオ上で描写として何時何分とは書けません。

 

何時何分を見える形にしなければ伝わらないのです。

 

あるいはセリフとして「何時何分だな」と役者に言わせて観客に聞かせないと伝わらないのです。

 

非常に面倒くさくて面白いのです。

 

シナリオでは時間経過の描写が必ず使われます。

 

時間が経ったことを観客に伝えようとします。

 

この場合でも5分経った、という事実だけをそのままシナリオに書けません。

 

ト書きに「5分経って」とかは書けません、NGです。

 

5分経ったということを見える形、または聞こえる形に変換して、描写として書かなければ伝わらないんですね。

 

シナリオではこの経過という一見目に見えない要素でも目に見える形、耳で聞こえる形にして観客に感じさせなければなりません。

 

理解させるのではありません、見せて聞かせて感じさせるんですね。

 

時間が経ったと言うことを「感じさせる」のです。

 

観客に対して感じさせるためにはどうすればいいのか、というと比喩などを使って間接的に伝えるのです。

 

「例え」を使うことで観客には目に見えないようなものでも映像を使って伝達することが可能となります。

 

というか、人に感じることで理解させるには例えを見える形、聞こえる形にしなければ基本伝わりません。

 

その形ってなんなのよ、どんな動作なのよ、を具体的に書かなければならないのです。

 

この感じさせる仕組みは映像表現する上で必ず行わなければなりません。

 

映像を使う以上、文章表現は一切できないのです。

 

描写〜目に見える形、耳で聞こえる形〜

シナリオの書くこととは、例えば時間が経ったことを伝えるには単に時計を画面に映すのではなく、違った形にして観客に感じさせます。

 

アイスコーヒーに入っている氷は時間が経つと溶けて小さくなっていって、最後に「コロン」と音を立ててグラスの下に落ちますよね。

 

この様子を描写することで見ている観客に時間が経ったことを感じさせます。

 

灰皿に置かれたままのたばこをそのままにしておくと、灰の部分が長くなってしまいには崩れていきますよね。

 

その様子を見せて時間が経ったことを感じさせます。

 

このように文章を書いて、それを読ませて理解させるのではなく、伝えたい意味を 『見せて、聞かせて』 感じさせるのがシナリオの役割なんですね。

 

私たちは普段、伝えたい意味を文字に変えて文章にして人に伝えますが、シナリオの場合は意味があってその意味を見える形、耳で聞こえる形にして伝えます。

 

これが間接表現の本質です。

 

そしてこの表現手法は、目に見えない事象について、とても上手く表現出来る最適な手法でもあります。

 

物理的に見えないものでも、感じさせることで伝えられるのです。

 

例えば社会的地位、会社の社長さんはいつも「私は社長」なんて看板に書いて首からぶら下げているわけじゃないですよね。

 

この場合、社長さんらしい行動ってどのようなものなのかを考えます。

 

通勤でお抱えの運転手がついた黒塗りの高級車に乗っていれば社長らしくなります。

 

同時に朝の満員電車に押し込まれているような人を書けば、平社員との違いを見せることで社会的地位の意味が伝わります。

 

そして、ことシナリオに描くことの専門分野は人の感情表現にあります。

 

恋愛感情で、好きな人の前では人はどんな行動をしでかすのでしょうか?

 

普通と違うはずです。

 

急いでいる人はどんな行動をしますか?

 

普通の人とは違った行動であるはずです。

 

恨んでいる人は普通の人とやっぱり違った行動をします。

 

その行動ってどんなアクションでしょうか。

 

そのアクションの部分だけ、シナリオには書けるのです。

 

間接表現〜モンタージュ〜

一つのアクションや一つの場面だけでは意味が伝えきれなければ、アクションとアクションを組み合わせて意味を表します。

 

2個で足らなければ3個重ねて、4個重ねて、と重複します。

 

映像の効果の手法をひとつお話しします。

 

これってスクールなんか行くと必ず教わりますが・・・

 

モンタージュという効果があります。

 

モンタージュとは、

 

全く違うシーンを複数見せることにより意味を伝える映像の見せ方のこと、映像効果のひとつです。

 

例えばお金持ちの映像と乞食の人の映像を見せることで「貧富の差」が表現出来ます。

 

結婚式のシーンと列車に乗り込む女性のシーンを見せることで「失恋」の感情が表現出来ます。

 

日常の風景と導火線の火花を見せることで迫り来る「危機」といった状況の描写が出来ます。

 

このように一つ一つのシーン自体に変哲はありませんが、それに何かを組みわせることで伝えたい意味を見いだすのです。

 

すんごい昔の映像監督さんが国威高揚のために作られた映画で初めてやられた手法だそうですが、

 

現在でも間接表現のお手本となっています。

 

映像の制限

優れた表現手法でもある映像ですが無制限というわけではありません。

 

シナリオに書くことができる映像表現は文章表現に比べてとても汎用性も高いし、人の想像力が如何なく発揮できる表現手法です。

 

人の想像で作られるものなので、それこそ時間も超越できるし、おとぎの国だって行けちゃいます。

 

宇宙旅行もできてしまいます。

 

なんでも書けてしまうような錯覚をしてしまいますが、その映像表現にはある制限が存在します。

 

それがフレームです。

 

キャメラのファインダーを覗くと四角く枠が切ってあります。

 

当然ながらキャメラに写るのはこの四角の中だけです。

 

シナリオもその縛りに準拠します。

 

シナリオはこの四角の中で繰り広げられることしか書けません。

 

ただし、このフレームはアップしたり引いたり、視点を動かしたりと結構自由に動けるものではありますが、

 

それでもシナリオはこの枠以外の部分は書くことが出来ません。

 

まあ、スクールではこの程度しか教えませんが・・・

 

そうですね、このフレームの中しか書けないのはその通りです。

 

でも実際には絶対に書けない、ということでもありません。

 

「直接的」には書けません、という意味です。

 

フレームの中で起こっているアクションとアクションの組み合わせで、視聴者にフレームの外を想起させることは出来ますし、

 

私たちが普通に見ている映像だってそのようなシーンがたくさん出回っています。

 

ただ、シナリオの役割としてはこのフレームに写るシーンの羅列を設計することなので画にならない部分は書けません。

 

でも間接表現を使えばその範疇を超えることも出来てしまうのです。

 

さらに映像って人の印象にも大きな影響力を発揮することができるんですね。

 

映像で伝わる印象

最たるものは色ですね。

 

例えばモノクロームの映像は見ている人に言葉にならないようなイメージを持たせることが出来ます。

 

人に感じさせることで伝える映像媒体は物事の意味のみならず、印象、イメージと言った言葉にならないものまでも表現出来てしまいます。

 

このように、文字表現では成し得ないほどの豊富な表現が映像には出来るのです。

 

我々シナリオライターはこのような映像の特性を理解して、文字として映像を書く、『描く』 ということなのです。

 

シナリオ座学描写編T


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