シナリオ座学描写編T
観客に映像を通して感じてもらうには描写しなければならない。
物事を見せて、聞かせなければならない。
直接表現でシナリオは書けない。
描写のケーススタディを話す。
タイトル法
映画でもテレビの連続ものでもタイトルや劇中の字幕といったものは必ず入りますよね。
その書き方はタイトル法なんて言われています。
映像に載せる文字はシナリオ上で、どうやって書き入れるのかというと、大きく分けて二通りあります。
柱に書く場合とト書きに書く場合ですね。
柱の場合はまるっとしたあとに「タイトル」としてから改行してタイトル名を指定することが出来ます。
作品のメインタイトルを映像に載せるときなんかに使います。
ト書きに書く場合はそのままタイトルとして改行してから挿入するタイトル名や文言を書きます。
この場合は物語の進行の中でサブタイトルや字幕だったりテロップの挿入が必要なときこのように書き入れます。
どちらの書き方も表示される形にリクエストがあればト書きに指定します。
例えば全画面で、とか字幕スーパーで、とか。
見せ方そのものはシナリオライターが考えるべき仕事ではありませんが要望があるなら、または物語上必要ならばト書きに書きます。
描写の特徴ケーススタディ
NとM
映画やドラマなどを見ていて、声だけ載せてあるシーンってたくさん目にしますよね。
これはシナリオではナレーションとかモノローグといいます。
ナレーションにも2通りあって、
登場する人物がセリフ以外で声だけで状況説明やいきさつなどを言葉として載せるやり方がひとつ。
もう一つはナレーターとして人物以外のキャストにしゃべらせるというものです。
モノローグはしゃべる動作があれば独り言になりますが、しゃべる動作をしないで声だけ載せると、人物が想像していることだったり心情だったりが表現出来ます。
どちらも使いすぎには注意です。
演出のエッセンスとして使う分には構わないし、視聴者にも伝わりやすい特徴がありますが、これって使いすぎるとシナリオの役割を果たせなくなります。
シナリオは文章表現ではなく映像表現で書かなければなりません。
このナレーションとかモノローグって言葉を単に声として朗読するだけなのでいくらでも説明が出来てしまいます。
声だけで物語を進行させることだって出来るんです。
本来そこに我々の役割でもある描写を載せなければならないところまで、声だけでまかなえてしまいます。
それでは作られた映像作品の品質ってダダ下がりになってしまいます。
本来感じさせてナンボの作品が終始聞かせて理解させるのであれば映像にする必要もなくなってしまいます。
当然聞かせることも映像の優位性ではありますが、やっぱり見せなければ観客は納得しないでしょう。
第一、このNとかMってシナリオライター的に非常に楽なんですね。
映像の作りとして、NやMでお話を引っ張る設計でもされているなら別ですが、基本的にやり過ぎに注意です。
演出として挿入することはとても効果を発揮する描写ですが使い方には気を付けなければなりません。
動作をセリフで言わせる
これって演劇の手法ですよね。
これはこれで演劇はそのような手法で見せるものだからそうしています。
特に舞台は観劇という形で演者と観客の距離が離れています。
細かい描写をしてみても、観客からは見えない、のです。
だから意味も含めてセリフで伝える必要があるのです。
映像では、何かしら強調するような目的があるなら動作をセリフで言わせてもいいかもしれませんが、やっぱり動作は動作としてアクションで見せた方がいいと思います。
なぜか・・・
セリフもしゃべる言葉なのでいくらでもしゃべれば伝えることが出来てしまうからです。
セリフはト書きではありません。
何かしらの演出でもかまさない限り動作や状況説明を言わせるということは気を付けて使ってください。
この先、実際にシナリオ執筆する際も、例えばテーマを役者にセリフとしてしゃべらせてはなりません。
テーマは、物語り通じてその意味を伝えるものです。
テーマそのものをセリフにすることは愚の骨頂と知ってください。
シナリオを書く意味が無くなります。
意識の描写
回想とか夢の描写ですね。
これって非常に有効な描写法です。
思い出や過去の出来事は人物の心情の理由付けにも応用できますし、使い方によっては感動を呼び込めます。
夢の描写は整合性がとれていない夢が人物の本音を反映させていたり、常識を破るような描写に使えます。
特に日本の映像にはこの回想を使って感動を呼び込む手法が、まあ王道でもあります。
映像にレバレッジが効きます。
ただし、これも使い方に注意です。
空想ですのでなんとでも書けてしまうのが意識の中での描写です。
そもそも見ている人に意味が通らなければ描写になりませんので、例え支離滅裂な夢であっても支離滅裂のままでは当然使えません。
キャラクターの特徴付け
人物の仕草や動作に特徴を付ける描写というものも大変有効であり、王道でもあります。
人物の「らしさ」というものが描写出来るか否かで視聴者が好きになったり嫌悪感を抱かせることが出来ます。
物語に登場するキャラクターの個性というものを見ている人に感じさせるには、目に見える形、耳で聞こえる形で動作として見せなければ伝わりません。
面白いと感じてくれればシナリオ的に成功となるような要素です。
キャラクターの性格そのものは目に見えないものであるのですが、それでも仕草や行動として目に見える形、耳で聞こえる形に変換することで表現できます。
そのキャラクターのかわいらしさとは、どんな仕草なのか、どんな動作なのか、どのような事を言うのか、どんなリアクションをするのか、
こういったことを個性付けとして描きます。
リアクション
人物に何らかのアクションをぶつけてみて、その返しに洒落や意味合いが含まれていたりすると見ている人は楽しさや感情を感じることが出来ます。
人物同士の関係性や物語の面白さに直結する描写がリアクションです。
漫才やコントの掛け合いみたいに、ボケとツッコミの組み合わせで見る人を楽しませます。
上手くいくと観客を物語にぐ〜っと引き込めたりもします。
キャラクターのリアクションだけで十分物語が成り立つほど有効な描写です。
リアクションは作ろうとするとけっこうセンスを要求されますが、端的に面白みを表現することが出来るので非常に便利です。