アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

マクロスプラス|シナリオスキル

今回のお題は

 

「マクロスプラス」から読み解く永遠のテンプレ、です。

 

思いっきり古い作品です。

 

このシナリオスキルで紹介している作品の中でも最も古いかも知れません。

 

だからもしあなたが若い方ならオヤジの昔話になるやもしれませんw

 

私が子供の頃、中学生くらいだったと思いますがロボットの登場するアニメとして王道がご存じ旧日本サンライズの「機動戦士ガンダム」がありました、再放送でしたけど。

 

対抗馬としてスタジオぬえの「超時空要塞マクロス」という作品がありました。

 

共に人型ロボットの設定が中心でお話しが作られていました。

 

ガンダムはモビルスーツで、マクロスはバトロイドバルキリーです。

 

ガンダムのシナリオはけっこう骨太でした。

 

大人の鑑賞にも耐えうる人間ドラマが中心で、敵勢力にも主役級のアイデンティティが与えられていました。

 

明らかにそれまであった勧善懲悪一辺倒の子供向けアニメとは一線を画した、近代アニメの草分け的な語り口でした。

 

「創世記エヴァンゲリオン」も革新的でしたが、どちらかというとマニアックな部類でガンダムほどメジャーではありませんでした。

 

エヴァンゲリオンは超オタク向け、といった感じです。

 

一方、マクロスはもっとスタイリッシュだったと思います。

 

キャラデザも美樹本晴彦さんの繊細な細い線できれいでした。

 

マクロスで描かれている人間ドラマは今も昔も恋愛モノ、それも三角関係限定です。

 

大人の恋愛の三角関係ですから、これもまたそれまであった子供向けアニメとは違っていました。

 

ガジェットも当時現存する戦闘機を応用し変形要素を加えたものでした。

 

アメリカのF−15戦闘機をモデルベースにした可変戦闘機で“ファイター”、“ガウォーク”、“バトロイド”と同じ機体で変化できます。

 

それまでのロボットアニメでは合体したり分離したり、変形するとしてもけっこうムリクリに展開していて、勝手に大きくなったり広くなったり、長くなったり尺度が変わってみたりで、見ていても子供だましだと思っていました。

 

それがこのマクロスでは現存の戦闘機のデザインそのままで変形させています。

 

このパターンデザインが私的に「カッコいい」と感じて好んで見ていました。

 

メカデザインはあの河森正治さんです。

 

当時私は毎週日曜日の午後のTBSでの放送にかじりついて見ていた記憶があります。

 

ガンダムとマクロスは、お話自体は全く違いますがよく比較されます。

 

学校の友達の好みもガンダム派、マクロス派と分かれていました。

 

それほどオリジナリティに富んでいるこの2作品でありますが、それは今でも続いています。

 

ガンダム系の最新ってなんでしょうか?あまりチェックしていませんがユニコーンあたりかな。

 

マクロスでは「マクロスΔ」だったと思いますが、マクロスFほどヒットせず、なんか鳴かず飛ばずな印象で私は見ていません。

 

で、

 

マクロスにはいくつか昔から続いているモチーフだったりテーマが存在します。

 

そう、かれこれ40年くらい引き継がれている共通要素があるのですね。

 

それがバトロイドバルキリーを操る“戦闘機乗りが主役”で繰り広げられる“三角関係”の恋愛劇、そして“歌”です。

 

これが今でもマクロス系のお話しの共通テーマになっています。

 

昔からこれだけに限って追求し、形を変えて現代まで受け継がれています。

 

これってけっこう整合性があるのですよ。

 

戦闘機乗り、というのは憧れ性に繋がります。

 

男の子は誰でもこういった運転士や操縦士に憧れた記憶があったりします。

 

なにせカッコいい。

 

三角関係の恋愛パターンは大人の鑑賞にも耐えられるようにしなければなりません。さらに三角関係ですからデフォルトで葛藤があります。

 

そして歌が決定的です。当時、本編である「超時空要塞マクロス」の歌姫は“リン・ミンメイ”です。

 

お話しではこの歌が敵勢力であるゼントラーディー軍の深層心理に大きく関わる設定でした。

 

劇中セリフで言うなれば「デカルチャー」です。

 

歌を聴いた敵のゼントラーディー人は戦意を喪失します。

 

つまりはお話しの中に要素として歌が入るということなのですが、これが現代で言うところの“メディアミックス”に繋がります。

 

今のアニメでは当たり前になった劇中歌やキャラソンですね、楽曲を挿入してアニメ本編と共に音楽を売ります。

 

これを声優に歌わせることでタレントとしてもアイデンティティを与えて売り出します。

 

昔の声優さんに比べて現代の声優さんに求められる資質も増えました。容姿もきれいで歌も上手くなければなりません。

 

お話しの付加価値として本格的なオリジナルの楽曲を盛り込んだ手法は、当時としては画期的だったと思います。

 

今回、数あるマクロスシリーズの中からあえてマクロスプラスを選んだ理由はいくつかあります。

 

ひとつはOVAで短編である事、もうひとつは音楽に菅野よう子さんが参加されていることです。

 

あともうひとつありました。この作品では、部分的ではありますが当時ではまだ珍しかったCGアニメーションを使っていました。

 

「マクロスプラス」は1994年に発表されました。

 

監督は渡辺信一郎さん、「坂道のアポロン」の監督さんです。

 

総監督は河森正治さんです。

 

脚本は信本敬子さんです。アニメも書いていますがどちらかというとリアルドラマの方の脚本家さんのようです。

 

たいがいマクロスで描かれる三角関係とは男性1人に対して女性2人ですが、このマクロスプラスでは男性2に対して女性1人です。

 

ヒロインのミュン・ファン・ローンは他のマクロス作品と違って歌姫ではありません。元学園のアイドルが大人になってから選んだ職業の音楽プロデューサーとして登場します。

 

マクロスを知っている人からすればかなり異色な設定がマクロスプラスにはあります。

 

では誰が歌姫として登場するのか、というとミュンの傀儡であるシャロン・アップルです。

 

シャロンは今で言えばバーチャル歌姫です。初音ミクのようなイメージです。現存しません。

 

こういった現代を予感させるようなリアリティが大昔の、このマクロスプラスにはあります。

 

「未来を予想してアニメで表現する」

 

アニメの本懐であります。故に取り上げました。

 

他にも劇中のセリフで「ドローン」という言葉が出てきます。バルキリーの模擬戦闘で標的にされる機体のことを指していますが・・・

 

この時代で「ドローン」という単語が使われていること自体、そうとう未来予測が根拠あるものだったに違いありません。

 

そしてなにより菅野よう子さんの楽曲が素晴らしいのです。

 

テーマ曲でもある「VOICES」は今改めて聴いてみても革新的な曲に仕上がっています。

 

やっぱりマクロスシリーズの変遷を見ても歌がヒットしないと、やっぱりその作品もパッとしない印象が私にはあります。

 

マクロスの三大要素に賞味期限はありません。

 

人の普遍性は今も昔も大して変化していないのですね。

 

だから得意なテーマや書いてみたいテーマがあるなら、それは形を変えさえすれば使い回しが出来るのです。

 

そして絵的に今見ても見劣りしません。

 

確かに今のCGとは比べものにならないくらいの品質ですが、それでもアイキャッチなどはデザイン性に富んでいます。

 

大昔の作品ですが一見の価値があります。

 

シナリオをひとつ書いてみたら、根幹のテーマは変えずに表現の部分だけ変えると、それが人の普遍性であるならば未来永劫使える、ということです。

 

人の普遍性は時代が違っても変わらない、つまりは「永遠」なのですね。

 

あなたでしたらどんな三角関係を想像するのでしょうか。

 

かなり汎用性に富んだテーマになるので書いてみても楽しいのではないでしょうか。

 

最後にもうひとつ。

 

マクロスの名物で独特の空戦シーンというものがあります。

 

板野一郎という異色のアニメーターがおられます。当時のアニメ雑誌に「マッドアニメーター」として取り上げられた記事を今でも憶えています。

 

空中を飛ぶ戦闘機のポッドから複数のミサイルが発射されます。

 

放たれたミサイルが標的機を追いかけるのですが、そのシーンとは定位置からの俯瞰とかではなく、視点や画角を絶えず変化させながら描かれているのです。

 

これは実際に見て貰うしか説明のしようがありませんが、もの凄く立体的で迫力のある画になっています。

 

このシーンをデザインしたのが板野一郎氏です。

 

当時からの革新的なアイディアが現代まで受け継がれている、それがマクロスなのですね。


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