アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

宝石の国|シナリオスキル

今回のお題は

 

「宝石の国」から読み解く人物設定、です。

 

市川春子さんの漫画原作です。

 

アニメ版は2017年に放映されました。

 

監督はラブライブ!の京極尚彦さん、シリーズ構成は大野敏哉さんです。主にふでやすかずゆきさんが書いています。

 

大野さんはガッチャマンクラウズのホンも書いていますが、アニメ脚本というより実写ドラマの脚本家です。

 

キャラデザはラブライブ!で京極監督と組んだ西田亜沙子さんです。

 

アニメ制作はCGアニメーション制作のオレンジが初めて元請けで作りました。

 

セルライクフルCGで見ての通り、かなり美しい作品に仕上がっています。

 

世界観は未来の地球です。

 

メンターでこの物語の指導役である金剛先生のナレーションで始まります。

 

6度流星が地球にぶつかって、6個の月が出来て、その後長い時間が経った世界の出来事として描かれています。

 

登場人物で見た目理解出来る人物は金剛先生が僧侶風と言うことだけで、他のキャラクターは“宝石たち”として女性のイメージになっています。

 

宝石たちは自分たちを狩りに訪れる“月人”と戦い続けている、そんなお話しです。

 

この作品はとにかく市川春子さんの世界観が素晴らしいのです。

 

ストーリーボードが優れている上にオレンジの映像がとても美しい逸品だと思います。

 

で、

 

登場人物はそれぞれイメージとして宝石が引用されています。

 

宝石の擬人化です。

 

メインキャラクターは「フォスフォフィライト」通称“フォス”なのですが宝石の特徴に由来して人物、性格設定がなされています。

 

宝石、つまりは希少鉱石の類いですね。いわゆる“色石”と呼ばれている鉱石はそれぞれ硬度と靭性が違います。

 

リアルの宝石のフィスフォフィライトはもろい石です。

 

美しいハッカ色で硬度も靭性も低く弱く割れやすいのでほとんど加工されないで原石のままで流通するそうです。

 

キャラ設定もそれらに準拠しています。

 

フォスは弱いので戦いに不向きとされていて金剛先生からも戦闘要員として認められていません。

 

だから言葉で誇張することが得意で、台詞回しやアクションがとてもコミカルで面白いのです。

 

1を100のような物言いをします。

 

対してダイヤモンドは最高の硬度により優秀な戦い手です。

 

ただし単結晶なので割れやすい、つまり繊細なのです。

 

そういった特徴を人物に当てはめています。

 

ダイヤは美しくて可愛くて、繊細で気遣いが出来る優しい人物設定になっています。

 

このように宝石の特徴に人物の性格や行動や癖といったものを照らし合わせ、当てはめる、これが擬人化です。

 

この作品はもう一段工夫されています。

 

たいがい宝石と言えばメジャーなものを思いつくでしょう。

 

ルビーやサファイヤ、エメラルドといったよく知っているモノでも構わないはずです。

 

でも、あえて色石でもマイナーな宝石を例えに使っています。

 

この作品で私が知っていた宝石名はダイヤモンドくらいです。

 

フォスフォフィライトやアンタークチサイトなんて知りませんでした。

 

このようなカテゴリーを世界観に取り入れて、この作品の場合、石の特徴を人物に投影することで確立しています。

 

誰もが知っている宝石でも、もう一段深度の深い世界、マニアックな世界でイメージングしているのが「宝石の国」です。

 

これが市川春子さんの目の付け所の優れている部分です。

 

そのイメージもオレンジのCGが絶妙に表現していて相乗効果を生んでいます。

 

役立たずのフォスでもきれいなハッカ色をまとい、ティーザーでも使われたフォスが割れるシーンは見ている人をドキッとさせます。

 

アニメでは擬人化が常套手段のひとつとなっています。

 

戦艦だったり(艦これ、アルペジオ)、草花だったり(リルリルフェアリル)、はたまた動物(けものフレンズ)だったりしています。

 

宝石の国を見たときに昔見た手塚治の「リボンの騎士」を思い出しました。

 

確かヒロインの名前はサファイアだったと思います。

 

サブキャラクターにジュラルミンとかプラスチックなどのネーミングがあったと記憶していますが、リボンの騎士の場合は素材でした。

 

それら素材から発想を広げると階級や気品といった比喩表現に使えるのですね。

 

何が言いたいのかというと、あるカテゴリー内での部類分けを人に置き換えるだけでイメージの訴求が出来るということです。

 

私たちリアルで生きている人間も時代や立場などによってカテゴリー分けされて生きています。

 

同じ人でも子供である場合と大人では違った価値観があります。

 

学生でも高校生と大学生ではイメージが違います。

 

既婚者と未婚者では言うことが違います。

 

会社員と経営者では同じ人でも見ているところが違います。故に言うことも発想も違います。

 

人はこのような何らかのカテゴリーに必ず所属しています。

 

同じカテゴリーでもそれぞれ違いがあるから物語が発生します。

 

みんな同じならばストーリーには成り得ません。

 

ひとつの発想法として、無機物に人格を当てはめて有機的に想像してみます。

 

例えばダイヤモンドのイメージってどうなんでしょう。

 

これは作者の主観になると思われますが、宝石の国で登場するダイヤのような美しくて可愛いキャラが似合うと思います。

 

硬度と靭性の弱いフォスならば、戦えないコンプレックスを抱える性格に出来ます。

 

そのような想像が出来ればフォスの性格設定も金剛先生に口答えできる、口ばかりの性格にもうなずけるのですね。

 

そしてそこから悩みや矛盾も派生できます。

 

シナリオは何かに例えて人を描写するものです。

 

その“例え”とは想像次第でいくらでも出てくるものですが何かのガイドが必要になります。

 

他のカテゴリー、「宝石の国」でいえば無機質な鉱物に例えて人を描写する手法はとても説得力のある方法です。

 

ただし全くの無関係ではなかなか紐付けも難しくなりますが、宝石の国のキャラクターは女性像なので「美しさ」という掛け合わせを持たせてあるのです。

 

何にもないところから人物の性格を発想せよ、とはかなり無理があります。

 

私も「知っている人の特徴を引用せよ」、なんてサイトで言っていますが不十分なことでもあります。

 

それこそクリエイターという特殊技能者にしか出来ない芸当のように思われますが、そのクリエイターだってそのような発想のとっかかりによって生み出しています。

 

キーワードは「もしも」です。

 

もしも、手にしているものが人だったら何を言い出すでしょうか。

 

もしも今見かけた現象が人であり、あなたに文句を言うとしたら何て言い出すのでしょうか。

 

もし、今通り過ぎたネコがあなたを見て喋ったとしたら、なんと言って立ち去ったのでしょうか。

 

これが擬人化から発想する方法のひとつです。

 

こんな視点で世の中を見通してみると、ひとりでにやけるほど楽しくなってきたりします。

 

難しいように思われる人物設定はこのようにして発想し膨らませることで確立出来るのですね。

 

メインキャラのフォスは中盤以降極端な変化が起こります。

 

それは経験によって引き起こされて、そういった人の普遍性を経て変化に繋がります。

 

擬人化でも、もし深度の深いお話にするなら例えたものでも徹底的に人臭くするべきであり、そうして初めて比喩対象が生きている人として表現出来るのですね。

 

「宝石の国」は発表された年の最優秀アニメだと私は思います。


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