アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

ガールズ&パンツァー劇場版|シナリオスキル

今回のお題は

 

「ガールズ&パンツァー劇場版」から読み解く群像劇の仕組み、です。

 

オリジナルアニメでテレビシリーズがヒットしました。

 

監督は水島努さんでシリーズ構成、脚本は吉田玲子さんです。

 

シリーズは2012年に放映されて劇場版は2015年に封切りされました。

 

メディアミックス作品なので漫画、小説、ゲームと露出が多い作品です。

 

アニメでもシリーズ本編とOVAや劇場版があります。

 

やっぱりオリジナルでないとヒットしない、とまで言いませんがアニメの劇場版では成功作品です。

 

この“ガルパン”は女子のたしなみとして華道や茶道など他に“戦車道”といういわゆる武芸が存在する世界で、女子高生たちが戦車道に励む姿が描かれています。

 

架空設定の戦車道は、要するに戦争で使う兵器の戦車を使って戦いあって優劣を決めるという、けっこう物騒な武芸です。

 

ただし、使う戦車は過去の戦争で使われた歴代戦車で現代のM1エイブラムスなんかは出てきません。

 

もっとアナログだった時代の戦車戦を女子高生たちが繰り広げます。

 

女子のたしなみとして戦車道にも華道の裏千家みたいな流派が存在して家元などの設定があります。

 

ヒロインの西住みほ(にしずみみほ)は戦車道の家元の次女です。

 

この作品は男っ気ありません。恋愛ものではありません。

 

戦車道を通じて女子高生たちの結束や団結を描いています。

 

野球なら甲子園、吹奏楽なら普門館を目指すといった類いの活動ですがこの作品はもっと深刻な問題から事が始まります。

 

それはラブライブ!と同じ廃校の危機です。

 

戦車道の大会で優勝すれば廃校が免れる、そんな事情でみほ以下戦車道を志す者たちが奮闘します。

 

さて、

 

群像劇なんですね、この作品。

 

脚本の吉田玲子さんはこういった登場人物がたくさん描かれる作品を書くのが本当に上手いのです。

 

群像劇はシナリオ初心者にはかなり敷居が高いものであります。

 

書いてみてもあまり上手くいきません。

 

それはたくさんの個性を設計して配置しなければならないのに、シナリオの書式もまともに理解していなければ、書けるわけが無いからです。

 

シナリオが書けて、ずっとその先に群像劇という高等技術が存在します。

 

だからシナリオ初心者は書くな、とは言いませんがせめてシナリオが書けるようになってからチャレンジされた方がいいのでは、と思われます。

 

私はスクールに行っていたときに全部で20枚ぽっちのシナリオにやたら登場人物の多い作品を書いてきた人に出会いました。

 

読まれたシナリオを聞いてみるとやっぱりよく分かりません。

 

誰が誰だか伝わらないのです。

 

とりあえず主役は分かる、その程度でした。

 

このように初心者が群像劇に手を出しても結局書けないんですね。

 

その点は知識として分かっていた方がいいと思います。

 

でも、気持ちは分かります。

 

やっぱりたくさん登場人物がいた方がダイナミックな作品になりますし、世に出回っている作品を真似ようとするとそのような形になるのでしょう。

 

ただし、ちゃんと群像劇の仕組みは踏襲された方がいいと思います。

 

闇雲にたくさん人を増やすとシナリオが空中分解します。

 

これは間違いございません。

 

で、

 

ガルパンでもハイスクールフリートでもラブライブ!でもたくさん女の子が出てきて活躍する作品は面白いのですが、気をつけないといけないのが

 

「組織立て」

 

なんです。

 

このような作品に共通する要素とは組織立て、くくりが決められているということです。

 

単に主役やヒロインを一人設定してその他のキャストを無秩序に描いていない、ということです。

 

作者は登場人物にちゃんと秩序を与えます。

 

この与える仕事は作者のやることであり必須です。

 

群像劇とはその名の通り、“むれ”を作らないと登場する意味すら伝わりません。

 

グループを作ってそれに属さないといけないのですね。

 

ガルパンの場合はチームです。

 

そのチームに所属している前提で登場人物を増やします。

 

初心者が書くとこのような仕組みを理解していませんので、ただ無駄に人物が多くなっています。

 

いっくら人物を深く描いても

 

「なんでその人は出てきたの?」

 

で終わってしまいます。

 

さらにシナリオには揺るがすことの出来ない序列があります。

 

入門レクチャーでも触れましたが主役、脇役、端役のような序列があります。

 

描くべきは主役であり、主役のための作品ですので、こういったグループにもその前提は適用されます。

 

序列を無視するとお話になりません。

 

主役の属するグループが一番プライオリティを高くしないといけないのです。

 

それに準じてグループだったり、グループの中でもリーダーだったり、必ず順番があるのです。

 

そういった事情で群像劇には組織設計が必要になります。

 

組織図、人物相関図が欠かせなくなります。

 

その組織図に従い各エピソードを構想します。

 

決して脇役が主役を上回るような描き方はできません。

 

それにしても脇役の描写が疎かになっていいと言うことでもありません。

 

脇役の個性は主役級に描いても極単発的なエピソードにするべき、作品全体から見たシェアは限定的にするべき、ということです。

 

群像劇にはこういった階層や序列といった秩序の設計が不可欠となります。

 

だからシナリオに慣れてからで無いと普通頭が追いつきません。

 

こんな時には構成の大箱中箱小箱のような構想手法が役立つかもしれません。

 

イメージしやすいのではないでしょうか。

 

階層と序列に従って物語の秩序を決めます。

 

人を増やせば面白くなるわけではありません。

 

秩序があって機能して相乗効果が演出できるのです。

 

ガルパンはそんなことも見て取れるのですね。

 

閑話休題

 

私はアニメの劇場版ってあまり見ません。

 

それはシリーズのダイジェストだったりするからです。

 

1クール12話、時間にして4時間程度の物語を劇場版として2時間に集約した作品が目立つからです。

 

これは見ていて本当に面白くないんです。

 

特にシリーズがヒットしてクロスセルを狙った作品はこういった傾向があります。

 

オリジナルならオリジナル精神にのっとって欲しいものです。

 

ガルパンはその点、劇場版のオリジナルエピソードです。

 

ガルパンにはさすがメディアミックス戦略があって作られていますので知らない人でも魅力が伝わると思います。

 

シリーズのダイジェストはもうおなかいっぱいです。

 

登場人物の数と尺には密接な関係があります。

 

人物を多く登場させると間違いなく主役の描写は物理的に少なくなります。

 

確かに作品はダイナミックになりますが群像劇はこういったリスクも存在します。

 

そのあたりのバランスも作者は考慮しないと完成しません。

 

それ故、群像劇をまとめることって難しいのです。


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