アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

神のみぞ知るセカイ|シナリオスキル

今回のお題は

 

「神のみぞ知るセカイ」から読み解く女の子の感情の動かし方、です。

 

若木民喜さんの漫画原作で学園ラブコメです。

 

週刊少年サンデーにて長く連載されていました。

 

アニメ的にはギャラクシーエンジェルの高柳滋仁監督、シリーズ構成は大御所倉田英之さんです。

 

アニメ制作は倒産して無くなっちゃったマングローブです。

 

きれいな絵を作っていただけに惜しまれますがアニメ会社って新陳代謝が激しいのです。

 

松尾隼人さんの音楽が秀逸です。天門さんも楽曲提供しています。

 

絵はこれまた秀逸で化物語シリーズのぽよよんろっくこと、渡辺明夫さんと川村敏江さんが書いています。

 

この作品、“神のみ”の第1期は2010年に放映されてその後3期まで作られました。

 

総じてアニメ界のベテラン陣が作った作品なので今見ても総じて良く出来ています。

 

ラブコメなので当然アニメ的におちゃらけたギャグがあったり、デフォルメがあったり、なのですがよく見ると本当に繊細に作ってあります。

 

主人公の桂木桂馬(かつらぎけいま)は極度のゲーマーで授業中堂々とゲームばかりしているにも関わらず成績は体育会系以外はいつも100点という破天荒な人物です。

 

騒動に巻き込む役は新地獄から来たエリシュア・デ・ルート・イーマ、通称エルシィです。

 

桂馬はうっかり挑発的なメールに返信して悪魔と契約してしまいました。

 

そしてエルシィが現れ無理矢理駆け霊(かけたま)狩りに巻き込まれます。

 

2人は運命共同体で契約に反すると2人とも首がはねられてしまいます。

 

桂馬とエルシィは、人の心に取り憑いた悪霊“駆け霊”を見つけて、その人から追い出し拘留するために奮闘します。

 

桂馬が取り憑かれた女子をまるでゲームのように攻略して駆け霊を追い出してエルシィが捕獲する、という役割分担があります。

 

駆け霊は女子の心に取り憑く特徴があって、桂馬は毎回違うヒロインを口説き落として攻略していきます。

 

駆け霊の追い出し方が「心の隙間を埋めること」で適うので、恋をさせて最終的にキスをすると駆け霊が現れます。

 

つまり桂馬が相手の女子の心を掴む事で駆け霊の捕獲が適います。

 

で、

 

シナリオ的に面白いのが毎回違うタイプの女子を落とさなければならないところです。

 

桂馬には特殊なスキルがあります。

 

それはゲームの世界では“落とし神”との異名を持つ存在でギャルゲーの達人です。

 

ゲームの中で攻略した女子は数知れず、飛鳥空の回ではバグで動かないゲームソフトのヒロインまでも攻略してしまいます。

 

ゲームで培ったスキルをリアルに応用して次々に女の子を攻略して心の隙間を埋めていきます。

 

桂馬に恋をして心の隙間を埋められた女子は駆け霊に囚われていた時のそれまでの記憶を無くしてしまう、というなんとも都合のいい設定もあってか、エピソードは恋に落した段階で終了します。

 

さて、

 

シナリオ的にもいろいろ見るべき点があります。

 

まずは女の子のテンプレが見て取れます。

 

もし女の子像が浮かばなければ“神のみ”を見ると一通り紹介されています。

 

女子のカタログのようです。

 

第1期で攻略される女子は・・・

 

高原歩→体育会系、元気と勢いだけがとりえ

 

青山美生→ツンデレお嬢様、元お金持ち

 

飛鳥空(ゲーム内のキャラ)→美術部系絵描き女子、バグが多くて見捨てられたゲームのヒロイン

 

中川かのん→実在のアイドルで有名人キャラ、クラスメイトがトップアイドル

 

汐宮栞→文学系図書委員キャラ、無口で地味な無類の本好き

 

第1期の攻略された女子だけでもこれだけ個性の違う子を相手にして結果を出しました。

 

そしてシナリオ的に、この作品には「どうやって口説いたのか」の具体例が示されています。

 

相手によりますが一定のパターンが存在します。

 

桂馬はリアル女子嫌いです。

 

それでも攻略できるのはゲームで培った女子の法則性を知っているからです。

 

まあ、バカにしないで見てみるとほ〜と思うことが珍しくありません。

 

相手の心を動かすっていつもシナリオにどうやって書いていますか?

 

迷っているなら騙されたと思って一度この“神のみぞ知るセカイ”を見ると参考案件が描かれています。

 

あまり目立っていませんがこの作品のサブタイトルも私は見逃しません。

 

特に中川かのん回のサブタイトル「Shining Star」は桂馬の決めぜりふ

 

「君の光に惹かれて、みんなやってきた」に繋がっています。

 

汐宮栞回の「大きな壁の中と外」は図書館の中と外の違いという意味もありますが、栞の心情としての中と外の違いも表しています。

 

「大きな壁の中と外」これほど心打つコピーにはなかなかお目にかかれません。

 

汐宮栞回ではとにかく創造的で見ていて面白いのです。

 

栞は無口なのですが心の中では人一倍喋っています。

 

ですからモノローグ(M)が中心なのですが本への想いとしてものすごい長ゼリフを永遠と独白しています。

 

「本は芸術」

 

「本は文化」

 

「本は奇跡」

 

「本は時代」

 

「本は命」

 

「本は太陽」

 

「本は歌」

 

「本は人生」

 

「本は約束」

 

「本は風」

 

「本は海」

 

「本は星」

 

「本は心」

 

「本は夢」

 

「本は希望」

 

「本は愛」

 

「本は喜び」

 

「本は感動」

 

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

 

このシーンは松尾隼人さんのワルツに載って本たちが踊りながら栞の心情、想いを表現しています。

 

汐宮栞役の花澤香菜さんが心情豊かに語っています。

 

汐宮栞回はこのような映像効果も秀逸で図書館の本が濁流のように流れ出すシーンがあります。

 

CGの成せる技ですが、洪水のような本に呑み込まれていく栞のシーンは圧巻でした。

 

汐宮栞回はこういった演出も見所です。

 

所詮アニメ、とかバカに出来ません。

 

神のみぞ知るセカイは心の揺れ動きだったり心情表現のとても豊かな作品であり、見ていても美しいのです。

 

この作品のような感情表現が出来ればシナリオ的にも豊かになると思われます。

 

その為には長ゼリフだって間違いじゃないんですね。

 

こんなことも感じさせてくれる神のみぞ知るセカイなのです。

 

ただ、主人公の桂馬はリアル女子を嫌っていますが、女の子そのものが嫌いなわけではありません。

 

攻略した女子たちは一様に攻略中の記憶を無くしますが、桂馬の記憶が消えるわけではありません。

 

桂馬も感情込めて女子をその気にさせて攻略に至るので、後を引くような描写も垣間見えます。

 

あまり突っ込んで描写されていませんが・・・

 

感情がこもった攻略の後、達成感という描写はあまりされなくて逆に寂しげな様子を見せています。

 

駆け霊を拘留して満足なエルシィとは裏腹に、煮え切らない桂馬の姿にもシナリオ的な配慮がなされています。

 

こういった点も要チェックです。


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