アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

3月ライオン|シナリオスキル

今回のお題は

 

「3月ライオン」から読み解く主役の個性、です。

 

羽海野チカさんの原作モノでアニメ版は2016年からNHKで放映されており、この記事を執筆している現在も第2期が放送中です。

 

監督は新房昭之さん、シリーズ構成は新房監督と東冨耶子さんですが脚本は木澤行人さんが主に書かれています。

 

木澤行人さんはよく新房作品に出てきます。

 

元々セブンデイズウォーという映像制作その他を手がける会社名義でしたがどうやら独立されたみたいです。

 

今回、新房昭之監督のネタを書きたかったのですが3月のライオンにしました。

 

新房昭之監督は現代を代表するアニメ監督だと思います。

 

アニメの描写手法に独特の世界観があり、リアル寄りの人でも映像に興味があるなら是非見て頂きたい監督さんです。

 

とにかくシナリオの世界で言われているような常識をことごとく破ってもちゃんと映像表現というものを確立されています。

 

とても痛快な監督さんです。

 

例えば、長ゼリフはダメ、とか説明セリフはいかん、とされているところを演出で、または見せ方で見事にカッコよく描写されています。

 

シナリオ的に言われているようなモノなんか、くそ食らえってな感じです。

 

カッコよければいい、美しければいい、面白ければいい、映像コンテンツの本質を実現しています。

 

さて、そんな新房昭之監督とシャフトが手がけている3月のライオンですが、シナリオ的には主役である桐山零(きりやまれい)の個性について見てみたいと思います。

 

そのお話しとは誰のお話なのか、というとそれは主役についてのお話しとなります。

 

このあたりは当たり前なのですが桐山零の場合は顕著に主役の個性付けがなされています。

 

原作者の構想が優れているのですが、その個性をアニメではビビットに表されています。

 

主役にするべきキャラクターとはどのような点を描くべきなのか、

 

その答えを3月のライオンで読み取ることが出来るのです。

 

主役と脇役以下その他の違いってお分かりでしょうか。

 

それは描かれる深度で決まります。

 

主役が一番です。

 

何事においてもそうなのですが、主役が一番でなければなりません。

 

最近のアニメでも主役と脇役サブキャラの描かれている深度が近いものをよく目にします。

 

それは悪いことではありません。

 

主役級のパーソナルを脇役以下にも持たせることにより、より複数のキャラクターに感情移入出来る余地が生まれてお話しに幅が出てきます。

 

脇役以下にもちゃんと個性付けはするべきです。

 

3月のライオンでもそうなっていますが、ことこの作品は桐山零の描き方がある意味、ハンパないのです。

 

描かれている桐山零の年齢は恐らく16〜17歳くらいでしょう。

 

1年遅れの高校生です。

 

でもそんな若さにも関わらず希有で極端なパーソナルを持たされています。

 

主要な登場人物にも桐山零と形は違えど様々な境遇が描かれていますがその中でも突出しています。

 

生い立ちや境遇だったり、稀な存在として高校生プロ棋士という立場も与えられています。

 

このように複数の要素が物語上一番重なっている人物像として主役たる立場を確立しています。

 

多数の要素を盛り込むならもう主役しか与えられません。

 

主役だからこそここまでの個性を付けなければなりません。

 

本人の性格は至って普通です。

 

でも桐山零の存在は本人と言うよりも周りが決めています。

 

普通の人が普通じゃない人生を歩んでいてその様が鮮明に描かれています。

 

桐山零の主役像は「こうじゃなくっちゃ!」という要素が見て取れます。

 

主役は普通ではいけません。

 

普通の人物は主役になり得ません。

 

特別だから、スペシャルだから主役になれるのです。

 

それでも人物像全てが特別というわけでは無く、内向的でどちらというと暗い何処にでもいそうなキャラクターが特別な世界に放り込まれます。

 

放り込まれた結果、どうなった、が語られています。

 

シナリオ的に言えば憧れ性と共通性が共存して初めて感情移入が引き起こせます。

 

誰もがああなりたいと思う憧れであるプロ棋士と、弱っちくて優しい零の性格的共通性、弱みがあって共感が生まれるのです。

 

また、新房昭之監督の特徴として独特の“間”の取り方が挙げられます。

 

第1話なんか主役である桐山零のセリフはほとんど出てきません。

 

それでも零の感情表現が完成しています。

 

このようにシナリオでも、なんでもかんでも喋らせればいいというもので無い事が分かります。

 

シナリオの訓練にサイレント映画を見てみる、書いてみるというものがあります。

 

つまり、ト書きだけで表現するということです。

 

セリフは今日では無くてはならないものではありますが、それは表現の一方法であって実は喋らないで伝わる方が格段に説得力があります。

 

リアリティがあるのですね。

 

そのあたり、脚本家の範疇を超えるものではありますが、シナリオを書く者としては知っておかなければなりません。

 

セリフは真実を伝えられません。

 

映像を見せて、初めて真実が観客に伝わるのです。

 

“間”の取り方、その過程での見せ方、

 

新房昭之監督はその手腕が秀逸なのです。

 

これはリアルの監督さんでもそうそういませんし、お目に掛かったことがありません。

 

余談ですが、正直言って新房作品をこのコラムで紹介するにあたり、迷いました。

 

まどマギにするか、西尾維新系にするか、はたまたソウルテイカーにするか、

 

本当は私も3月のライオンのキャラデザがNHKチックであまり好みではありません。

 

将棋のモチーフもなんか流行に沿っているみたいで良く思っていませんでした。

 

でもやっぱり見てみると主役の描き方含め、やっぱり新房作品は面白い。

 

シナリオを志す人は一度は見て頂きたい、こんなことを感じさせてくれる3月のライオンなのでした。


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