アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

甘木ブリリアントパーク|シナリオスキル

今回のお題は

 

「甘木ブリリアントパーク」から読み解くリアルとファンタジーの融合、です。

 

賀東招二さんのラノベ原作物でファンタジーコメディ再建モノです。

 

2014年の京都アニメーション製で監督は取締役の武本康弘さん、シリーズ構成は志茂文彦さんです。

 

賀東さんも志茂さんも京アニとゆかりが深い人物です。

 

元天才子役の主人公、可児江西也(かにえせいや)は高校の教室で転校生の千斗いすずにマスケット銃で脅されたあげく落日の遊園地である甘木ブリリアントパークを再建していくお話しです。

 

テーマパークの存在にファンタジー性があって支配人以下おとぎの世界メープルランドの住人という架空の設定がなされています。

 

この作品はシナリオ的に横と縦があります。

 

横とはお話しの幅です。

 

ファンタジーとリアルと2つの幅があります。

 

ファンタジー面はメープルランドというおとぎの世界の住人たちが訳あって現世でテーマパークをやっています。

 

リアル面は経営再建です。

 

この作品はこのような横軸に幅があって、縦軸に時間経過で推移します。

 

縦軸も幅があって2つの問題を置いています。

 

解決できる時間制限の問題と解決出来ない時間制限の問題です。

 

幅の広い世界観で進んだ先には解決するべき問題が2つ存在します。

 

そしてこの作品はメインヒロインが2人登場します。

 

主人公の西也以外に主要な男性主役はいません。

 

主人公1人に対してヒロインはいすずとラティファと2人登場します。

 

この構図は信頼関係であるものの恋愛関係ではありません。

 

恋愛っぽいシーンはありますがそんなに深くは描かれていません。

 

なぜダブルヒロインとしたのか、それは縦軸の解決するべき問題が2つ存在するためと思われます。

 

いすずは元支配人代行です。

 

でも過去にパークの再建を任されて失敗しています。

 

パークの再建と期限とその条件、難題ではあるものの解決出来る問題を西也に託します。

 

もうひとりのヒロイン、ラティファはメープルランドの姫様で支配人です。

 

ラティファは甘木ブリリアントパークがなければ生存出来ない事情があります。

 

しかもパークが存続しても解決しない問題も抱えて生きています。

 

西也は完全に解決出来なくても過去に誓ったこと、「ラティファが笑わえる」ように尽力します。

 

シナリオ的にこのような立体的な構成は見習うところがたくさんあります。

 

なぜリアル寄りでなく、ファンタジー寄りでもないのかと言えば2つの要素で補完関係を構築しているからです。

 

単純にテーマパーク再建だけでもお話しは作れたはずです。

 

逆にファンタジーで書こうと思えば書けたはずなのに、2つ合体させて描かれています。

 

この辺はさすがラノベっぽいのですがシナリオ的にも作家的にもこの複合構造は面白いと思いました。

 

ファンタジー要素はコメディにも貢献していますが都合の悪い所の補完ではありません。

 

ちゃんと整合性が設計されています。

 

またリアルと抱き合わせなので説得力とか、つじつま合わせでファンタジーを使うにしてもちゃんと理由や納得出来る範囲での架空が描かれています。

 

いきなり異世界に飛んでいったりしません。

 

モチーフはおとぎの世界の住人ということですが、描かれている物事はあくまでリアルの普遍性があります。

 

全ての事象はリアルの甘木ブリリアントパークで起こっています。

 

このような複合構造は発想が難しいですね。

 

ただそれぞれの物語を合体させる手法はファンタジーにおいて常套な手法です。

 

ファンタジーは、もしリアルとの抱き合わせでお話しを作るなら必然としてストーリーを複数作らなければなりません。

 

ファンタジーの世界そのものしか描かなければひとつのストーリー、いわゆるひとつの世界観で作れるでしょう。

 

でも今の時代のファンタジーは甘ブリのようにリアルとの結びつきで描かれていることが珍しくありません。

 

この場合は当然、リアル面とファンタジー面で世界観を作らなければなりません。

 

だからとても手間が掛かります。

 

甘木ブリリアントパークを見ると、リアル面とファンタジー面と上手くお互いの足りない部分を補い合っています。

 

そして面白くなっています。

 

甘ブリではリアルとファンタジーと2つの要素がありますが、語り口も2つ設定されています。

 

ひとつはリアルライクに西也がパークを再構築していく姿を観客と一緒に見せる手法、

 

もう一つはミステリーなどで使う手法です。

 

つまり事情やいきさつ、理由といったものを後で見せるやり方です。

 

パークが存続しても解決出来ない問題をラティファは抱えています。

 

そのいきさつや敵の存在を後で見せています。

 

ラティファの事情は初めから観客に明示されていません。

 

布石として断片的な描写しかしていません。

 

その答えをクライマックスで見せています。

 

こういった語り口にも2つの見せ方が見て取れるのです。

 

2つの世界、2人のヒロイン、2つの問題、2つの語り口、

 

それらをまとめる主人公として西也が奮闘します。

 

この物語は2つの要素で幅の広い世界観が作られているのですね。

 

甘木ブリリアントパークからはこういったシナリオで使える構想手法も読み取ることが出来るのです。


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