アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

ハルチカ|シナリオスキル

今回のお題は

 

「ハルチカ」から読み解くサブキャラクターの個性、です。

 

初野晴さん原作の学園青春ミステリー吹奏楽モノです。

 

P.A WORKS製で2016年に放映されました。

 

監督は橋本昌和さん、脚本は大御所吉田玲子さんです。

 

キャラ原案はなまにくATK(なまにくあったかい、と読みます)、

 

キャラデザはラブライブ!の西田亜沙子さんで、やたら瞳のデザインが凝っています。

 

物語は高校に入学したヒロインの穂村千夏と主人公の上条春太の幼なじみコンビが吹奏楽部で頂点を目指すといったものです。

 

語り口が変わっていて吹奏楽部の活動に留まっていません。

 

どっちかというと仲間集めに尽力していますが、なぜか集める過程にそれぞれミステリータッチで語られています。

 

ここがハルチカの面白い着眼点です。

 

その象徴がサブタイトルに表されています。

 

「ヴァナキュラー・モダニズム」

 

「エレファンツ・ブレス」

 

「アスモデウスの視線」

 

など・・・

 

調べないと意味が分からないミステリアスなサブタイトルが目立ちます。

 

主人公の春太が探偵役となり、サブキャラクターが抱えている問題を解いていくようなストーリー展開になっています。

 

恋愛要素はあまりなくて春太と千夏、いわゆる“ハルチカ”はコメディチックな関係で描かれています。

 

人数の少ない弱小吹奏楽部に有能な生徒を集めるべく対象のキャラクターの問題や悩みを解いていくのですが・・・

 

このアニメから読み解けるシナリオ的要素とは脇役の個性です。

 

最近は特に感じますが、

 

サブキャラクターであっても最初から主役の隣に置いておかないで、

 

ちゃんと登場回を作ってバックストーリーを設定してキャラクターの個性を見せてから主役やヒロインと合流させています。

 

最初から脇に置かないでゲストにしてからサブキャラクターの位置に置いています。

 

このようにサブキャラの個性がしっかりしているとお話し物語の厚みが増します。

 

これは最近のアニメのシリーズ物では常套手段であります。

 

主役は主役として登場して活躍するのですが、シリーズの各話にはそれぞれ主役と関係の深いキャラクターの描写に放映一回分以上使って見せています。

 

メンバーが5人いれば5回以上キャラクターの紹介で使います。

 

昔では無かったことです。

 

昔はサブキャラに主役と同等な魅力は与えませんでした。

 

でも現代は違います。

 

サブキャラであっても主役やヒロインとの繋がりがしっかり描かれています。

 

作画も主役と同等に描かれています。

 

ある意味、今時のトレンドなのかもしれません。

 

でもサブキャラが映える作品は確実に面白くなります。

 

というか、サブキャラをサブとして扱ってしまうと作品のクオリティが下がります。

 

これは間違いありません。

 

こういった繊細な描写も尺の長いシリーズ物だから出来るということもあると思います。

 

映画の尺ではたった2時間ぽっちの中でたくさんの人物の個性を描ききることは物理的に出来ません。

 

まあ、出来なくはないとは思いますが無理が生じます。

 

結局、希薄になるしかありませんから、やはり登場人物は人数的に控えめになって然るべきです。

 

こんなことも“ハルチカ”を見ていたら感じました。

 

そういえばシリーズ物から派生したコンテンツじゃない、純粋にオリジナルのアニメ映画だったり、OVA作品の登場する人物って少ないのです。

 

例え登場人物が大勢いてもちゃんと個性まで描けている人数は少ないのです。

 

それは物理的な事情があってのことなのかもしれません。

 

しかしシナリオ的にはこの点、無視出来ません。

 

主役やヒロインだけちゃんと書けばいいという時代は終わっています。

 

魅力のあるキャラクターは視聴者的にはいくらでもいていい存在です。

 

書く方は大変ですが見せる要素は少ないよりたくさんあった方がいい、

 

それがユーザビリティというものです。

 

尺の中で描ききれる最大公約数を目指すべきなのですね。

 

脇役の個性が主役を引き立てます。

 

むしろ脇役サブキャラクターにこそ、本当の個性付けをするべきなのかもしれません。

 

“ハルチカ”のサブキャラクター陣はそれぞれ共通したテーマが読み取れます。

 

ひとつは「コンプレックス」です。

 

何らかの巡り合わせや境遇に対して劣等感を持っている状態で登場します。

 

その劣等感を春太が中心となり解決していく運びになっています。

 

主要なサブキャラはコンプレックスにより悩み苦しんでいます。

 

春太と千夏が真正面から受け止めて結果を出します。

 

その語り口としてミステリータッチでサブタイトルにあるような引用をしています。

 

一様にサブキャラの悩みとは意味が分からないことに対する恐れや憶測が招いた誤解となっています。

 

本当はそうじゃないのに、ネガティブに捉えてしまったサブキャラは苦しみます。

 

春太と千夏はサブキャラの間違った解釈の意味を解き明かすのです。

 

こういった方法はシナリオ的に使えます。

 

もともとサブキャラが持っているネガティブマインドをメインキャストが解消してあげることで信頼関係が生まれます。

 

春太なんか一人目のサブキャラである成島美代子に張り倒されても解決してあげています。

 

サブキャラの共通したもうひとつのテーマは「愛情」です。

 

みんな愛情を解釈出来なくて苦しんでいます。

 

成島美代子は亡くした弟の愛情、

 

マレン・セイは養子に出された元の親や弟の愛情、

 

後藤朱里は叔父と叔母の愛情・・・

 

みんな解釈が出来なくて悩みを抱えています。

 

人の信頼を受けるには、どうしたらいいと思われるでしょうか。

 

もちろん解消出来ることが特効薬となりますが、答えは無償の愛情を与え続けること、です。

 

相手の利となることを最初に主役から与えます。

 

春太と千夏は成島美代子が嫌がっても与え続けました。

 

愛情とは見返りを求めずにただひたすら与え続けることなんですね。

 

ハルチカは恋愛ものではありませんがけっこう愛情表現が描かれています。

 

“好き好き”の愛情では無く、思いやりという愛情表現もこの作品から読み取れるのですね。

 

感情表現とは決して一つではない、

 

ハルチカからはこんなことも読み取れるのです。


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