アニメシナリオ脚本スキルBlog|シナリオ教室の劣等生

魍魎の匣|シナリオスキル

今回のお題は

 

「魍魎の匣」から読み解くお話しの設計です。

 

“もうりょうのはこ”と読みます。

 

魍魎とは、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の魍魎です。

 

いわゆるバケモノの類いです。

 

匣とは箱としていいでしょう。

 

極簡単に訳せばバケモノの箱です。

 

このタイトルから興味をそそられます。

 

京極夏彦さんの原作物でアニメ版は2008年に放映されました。

 

推理物、ミステリーです。

 

演出畑出身の中村亮介監督作品で村井さだゆきさん脚本、絵はCLAMP原案、キャラデザが西田亜沙子さんでマッチングが秀逸なアニメです。

 

人物のデザインがとてもカッコいいのです。

 

推理物やミステリーといった物は特に理由や事情と言った要素の組み合わせ方で語り口、ストーリーテラーがなされています。

 

このような作品は設計が要になります。

 

シナリオ的にはどのように作られているのか、今回はお話しの設計方法について考察してみます。

 

見るべき所とは作った順番とおりに観客に見せていない点、だと思われます。

 

普通は何らかの事件だったり問題が生じて観客と一緒に解消していくストーリーテラーになっています。

 

キッカケとなる問題や理由というのは提示されてから、それをどうするか、どうやっていくのか、が描かれます。

 

事情が最初から明かされていて登場人物と観客が一緒に歩んでいけるようになっています。

 

ただ、魍魎の匣のようなミステリーは最初からタネは明かしません。

 

もっと後、クライマックスで明かします。

 

観客に見せない謎を置いて解いていく課程を主人公と観客は一緒に探求していきます。

 

そしてどんでん返しや驚愕の真実を後出しで知る構造になっています。

 

ミステリーのような後で真実を見せていく場合には設計と見せ方と逆になります。

 

つまり、訳があって行動を描くのでは無く、行動していって訳にたどり着きます。

 

作る側のシナリオでは過去の事情や真実を物語が進んだ先に見せるようにしています。

 

時系列通りに見せないのです。

 

それでもお話しの始まりは何らかのキッカケから始まるので、そのキッカケがあらかじめ作ってある過去のお話しから派生させています。

 

キッカケは過去の出来事に密接に繋がっていなければなりません。

 

更に過去の出来事から事情や理由を上塗りしていって現在の事象を作っていきます。

 

時系列で見ると、通常のストーリーでは何らかの事象が生じてから始まって、時間の経過に従って推移していきます。

 

その様はそのまま時系列に従って描かれています。

 

ミステリーは何らかの事象が過去にあってその上で現在が語られ始めています。

 

今現在起こったことから物語を始めるので無く、

 

今現在起こっている事象の元が既に過去にあったことに起因しています。

 

見せ方は現在位置でも物語は過去にあったことから設計されています。

 

それ故、最初に観客に見せないシーンだったりバックストーリーを作っておかなければなりません。

 

後で見せるべきシーンが必要になります。

 

過去の設定をした上でそこから事情をかませていって今現在の事象を導き出します。

 

ダブルでエピソードを作ります。

 

過去から現在までのストーリーを作ってから更に今現在から始まるストーリーを作る事になります。

 

2つ(以上)のお話しが必要なのですね。

 

この場合、過去のエピソードとメインで描くストーリーの主役は同じになりません。

 

全ての原因となる人物と探求する人物は変わって然るべきです。

 

シナリオ的には過去から現在を経て未来に向かうという時系列の中で

 

過去とは全ての原因であり、現在とは観客に見せるべきストーリーであり、未来とは過去の事情を明かすこと、

 

なのです。

 

ちょ〜っと分かりにくいかもしれませんが

 

シナリオを書く場合には、初めに過去の事象を考えます。

 

その初めに作った過去の物語は語り口として後で見せるようにします。

 

ストーリーのオープニングのキッカケは初めに作った過去の物語から事情や理由、いきさつなどを除いた形で現象や状況だけシーンとして見せます。

 

申したとおり、全ての原因は過去にあるのですがそれを見せるのはタネ明かしの段階である物語のクライマックスです。

 

だからクライマックスから作ることから始めなければなりません。

 

というわけで物語の逆算を行わないとならないのです。

 

推理物などのタネ明かしが必要な物語はお話しを進めていってどんでん返しを発想するのでは無く、

 

先にタネを想定してそこからオープニングの事象を紐付けしていきます。

 

そのタネは特別に非常識でなければなりません。

 

スペシャルなシーンである必要があります。

 

非常識で非日常、異常な状態で無いとオープニングで使えるほどの牽引力がありません。

 

魍魎の匣ではそこが描かれています。

 

この作品では他にも絶妙な描写がなされています。

 

それは現代ではテクノロジーが進んでいるものが過去の時代ではどうなるか、を考えてあるところです。

 

今は小さくて軽くて性能も格段に高くても過去の時代ではそうでは無かったはずです。

 

今より大きくて重くて効率の悪い物であるはずです。

 

それを匣として比喩されています。

 

CPUもメモリーも昔は馬鹿デカかったのですね。

 

時代設定は戦後ちょっとたった昭和27年頃です。

 

昔の日本はとにかく暗いのです。

 

その暗さが奇妙な匣を演出してオカルト性を伴っています。

 

描かれている人の意思というものは今も昔も変わりません。

 

でも時代が違うと意思を叶えるための道具は現在ほどスマートでもないしある種、異様な物となる場合があります。

 

そこに魅力が生じるのですね。


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