関わりのない分野ではうまくいかない
花陽は高坂家に通されて穂乃果たちに勇気をもらいます。
それは花陽がなによりアイドルに対しての造詣が深いことに起因しています。
もともと興味があったアイドルの世界、子供の頃から憧れていた分野が花陽にはありました。
この時点ではまだ花陽のアイドルフェチっぷりは露呈しておりませんがファーストライブ動画を食い入るように見る様はその片鱗を覗かせています。アイドルを客観的に見る力は穂乃果より高いのではないでしょうか。
このように関わったことがある分野では拡張することが容易なのです。
花陽はアイドルに興味もある、実際にマネしたこともある、声もきれい、落ちていた生徒手帳を真姫に届けるなどの行動力もある。
そして後は決断するだけの状態になっています。
逆に関わったことのない分野では、管理者は出来ないとは申しませんがとても道のりが長いのです。
その理屈をわかっていて取り組むのであれば問題も少なくなるのでしょうが知識や情報だけ集めれば関わったことのある人と渡り合えるかというとそうではありません。
化物語の羽川翼の名セリフ「なんでもは知らないわよ、知っていることだけ」とはよく言ったものです。
その通りです。人はなんでも出来そうで、なんでもは出来ないのです。要は経験と時間なのです。
花陽の場合はアイドルというものに興味を持ち始めてから何年も時間が経過しています。
その間、興味があればアイドルのことを調べたり、見に行ったり、マネしたり、自分の意見を持ったりとアイドルにまつわる経験を重ねてきているはずです。
ここに興味を持っていなかった人との距離=時間障壁ができます。
例えば凛はアイドルにはさほど興味はないようですが花陽と同じレベルになるには同じように時間を掛けなければなれません。
花陽と同等の経験を積まない限りアイドルフェチにはなれないのです。
凛の場合はスクールアイドルになる切り口を花陽と同じ路線ではない方向性で考えないと成就しません。
ところがリアルの人々は何か結果に不足を感じると、この経験値と時間障壁を無視して全く別分野での収益を模索するのです。
これは、気持ちは解りますが現実的ではありません。出来ないとは申しません。それなりに取り組むだけの理由が存在するのでしょうから。
でも経験を積む為に必要な時間がかかります。こればっかりは端折れません。
「関わったことのない分野ではうまくいかない」とは、時間がかかり尋常でない努力もいりますよ、結果が伴わないかもしれませんよ、結果的に失敗でもそれはその分野での経験の一つでしかありませんよ、ということです。
別に持ちこたえられれば、それはそれ、かもしれませんが収益を上げる目的には時間は無視できません。考えているようには叶わないと思われます。
またそんな冒険を行うためには改めて大義が必要になります。
お店の売上が悪いからといって極端な新メニューを考えるのではなく、今ある売れ筋をもっと伸ばす事を考えて、見せ方を工夫すれば売上が上がるかもしれません。
ビジネスを興す時、理想を求めて全く知らない分野に手を出すのではなく、自分の精通している分野で勝負するべきなのです。この場合、お金の額面で動くと間違えます。儲かるからといって自分と別分野に手を出せば間違いなく継続不能になるでしょう。
未経験の分野を知ることは大変有意義なことではありますし、リアル商売が順調でもそれだけに満足しないで開拓精神を持ち続けることは必要です。
でも準備もなしに出来ません。出来るわけがありません。
経験と時間障壁。この問題抜きに、なんでもは出来ないのです。