おしゃべりの特性

 

 

人の喋りを表現するセリフを考える時に知っておきたいことがある。

 

それは我々人の喋るという行動の特徴である。

 

なにげにセリフを考えていると、なんとなく自動的に踏襲しているものでもあるのだが、頭の中で区分け出来ているとイメージしやすいのである。

 

 

 

キャラクターが存在している状況

 

セリフを探求する前に、キャラクターがどのような状況に置かれているかを考えてみます。
小難しいかもしれませんが、要するにキャラクターが一人か、誰かと一緒か、みんなの前にいるか、ということです。

 

その状況によって芝居も変わりますし、当然セリフも変わってきます。
もちろんト書きも変わりますがここではセリフについて解説します。

 

独白 (独り言) 一人だけのセリフ

 

 ”独白” つまり一人だけの状況です。当事者以外誰もいません。
シナリオではモノローグと言います。
一般的に原稿用紙にセリフを喋る人物の名前の下に ”M” とか (M) と表示されます。
それこそ独り言です。喋っているのに相手が存在しません。

 

独り言にも実際に声に出して喋るものと ”心の声” みたいな人物の頭の中で喋っているものがあります。
 ”M” と表記すると実際に声に出した、セリフとしての独り言と解釈できます。

 

 ”心の声” とは人物が喋らなくても そのシーンに人物の声のみを入れる事を指します。
この場合はト書きでシーンを指定した上で ”穂乃果の心の声” とすれば キャラクターが口パクしないで声だけかぶせたり、キャラクターを写さないで背景その他に声だけ合わせられます。

 

単純にキャラクターを写したシーンには (M) としなくてもセリフの名前に ”穂乃果の声” としても表記できます。

 

そんなモノローグはシーンによって書き方を気をつけなくてはなりません。
考えたシチュエーションに応じて細かい指定が必要ならばト書きに書きます。
何人かと会話していて、その中での (M) ということもあり得ます。

 

そしてシーンとして大事な点は ”一人だけ” というところ。

 

我々リアルな人でも一人でいる時間は相当長いと思います、そうじゃない方も多いとは思いますが。
一人の時に誰かと話するようには喋りません・・・一般的にですが。

 

セリフにもこの現実を無視できません。
まず、シーンをイメージした時にセリフがどんな状況の時に発せられているか、
その状況に合っているか認識しながら喋らせなくてはなりません。
特にアニメの場合はこの (M) だけで芝居が進行することが本当に多いので、いいか悪いかは別としてセリフのバランスには気を付けたいところでもあります。

 

モノローグの他にもアニメでは特にナレーションが一般的に使われます。
 ”N” とか ”(N)” と表記されます。

 

これはその通り、観客に向けて解説、説明に特化したナレーション、いわゆる ”語り” です。

 

状況や境遇、人物の紹介など、観客に対して手っ取り早く物語の世界に入ってもらいたい場合に重宝します。
よく、物語の冒頭に状況説明と主要な人物の自己紹介なんか言ってますよね。

 

これにもいろんなパターンがあります。
キャラクター自身が紹介形式でナレーションしたり、
別の専門のナレーターを起用して違う雰囲気の声で 語り、観客の耳に訴えかけるように演出してみたり、
本来ト書きとセリフを駆使して伝えなければならないところを違和感なく至急に伝えられるので演ずる側、シナリオを書く側にとってはとても便利です。

 

便利なのですがあまり多用すると観客に飽きられます。
解説、説明が主なので伝わる感情が希薄になります。

 

聞かされる観客は必要以上のモノローグやナレーションには退屈しますし、演技の進行やテンポを妨げます。
自分で喋って、自分でボケて、自分でツッ込んで、次のシーン・・・なんて最悪です。

 

その最悪繋がりで説明セリフ同様、観客の想像力を削いでしまうリスクもあるのです。

 

一人のセリフでも 「あっ!」 とか 「いて!」 とか 「ぐわ!」 みたいな感動詞、感嘆詞はモノローグではありません。
寝言もモノローグではありません。ト書きに指定しましょう。

 

あと、 「くそ!」 とか 「この!この!」 とか・・・はなるべく使わない方がいいですよ。
この言葉には意味がないのと、作家のセリフのセンスの限界を指し示す言葉です。
もっと気の利いたセリフを与えてあげましょう。
(自戒をこめて)

 

感動詞について少しだけ。
セリフとセリフの間に挟まる、あまり意味のない言葉はシナリオには基本的に書きません。

 

キャストが剣を構える時に「ふん!」と言ったり、かわいいヒロインが登場するときに「きゃは!」とか言ったりするものです。

 

いや、書いてもいいのですがシナリオ自体が煩雑になるのと、セリフとして意味を持たない描写は避けた方がいいという観点から書かない事をオススメします。

 

そのあたりは演出家に任せてもいいかと思います。
どうしても使いたい場合には、そのシーンのト書きの最後に演出家さんに向けた指示お願いを書きこんでもヤブサカではありません。

 

会話 (相手がいる) 二人の喋り

 

自分と相手の1対1の ”会話” です。つまり、具体的な相手と喋る場合です。
5人のグループで道を歩いていて、主人公が喋りかける相手をその都度変えてもこの仕組みに則っています。

 

自分の喋る方向に必ず具体的な誰かが存在します。

 

 ”セリフ” と言われるものの典型的なパターンです。
軽快な会話のやりとりや感情が込められた言葉の流れだったり、セリフの醍醐味、面白みが発揮されます。

 

ト書きによるキャラクターの動作で表現するものも奥が深くて素敵ですが
単純に耳に入ってくるセリフは分かり易く直感的に感じられます。

 

口に優しい ならぬ、セリフは耳に優しいのです。

 

そんなセリフの代表格 ”会話” にも注意点がたくさんあります。
当然ながら、会話は情報のぶつかり合いではありません。

 

感情のぶつかり合いです。

 

そして相手に伝えたい情報を端から端まで喋りはしません。 ”感情” なのでとことん曖昧なのです。

 

セリフは動作(ト書き)と合わせて、かいつまんで、声に出します。
シーンの絵面と流れが想像できないと気の利いたセリフは出せません。

 

曖昧前提であるセリフは いかに感情を描写するかにかかっています。
前述で ”ウソをつけ” としたのは、裏を返せば 人は本心そのまま言葉にはしないよ、ということです。

 

本心に ”感情” というフィルターがかかるので本心そのままにはならないのです。

 

単に言葉を発するのはセリフではありません。その喋りには目的があって、その目的を果たす為には言葉ももちろん、動作から状況から場所(柱)から総動員して描写しなければならないのです。
我々が悩む点はセリフ等一連の流れを分かり易く観客に示さなければならない点なのです。

 

ですからセリフ単体での解説は不毛なところがあるのです。

 

ちょっと感情論まで膨れましたが
ここでは、状況に左右されるセリフの特徴として ”2人会話” が存在する場面を認識してください。

 

みんなと話す (大勢の前で喋る) パブリックスピーキング

 

喋る相手が3人以上いる状況です。
3人以上なので喋る相手が100人、1000人と言う場合も含まれます。
複数の友達同士や、学校の先生の授業、体育館で生徒会長のスピーチ、テレビのアナウンサーなどが当てはまります。

 

セリフは短い方がいい、長セリフはクサくなる、の原則はこの場合当てはまりません。
感情も入りますが どちらかというと物語の中で他人に情報を与えたりするので必然的に長くなります。

 

卒業生の送辞がひとことで終わる訳がありません。
当然、みんなの前で独り言なんか言いませんし、かしこまった状況では言葉として固い表現になります。
でも言葉は固くとも、表情は汗を垂らしていたり、泣きながら訴えていたり、
これも喋っている内容との矛盾が描写出来て、楽しいシチュエーションになります。

 

管理者の印象ですが、パブリックスピーキングみたいに大勢の前で一人が話す状況とは
まとめ的な意味合いが強いと感じます。

 

推理モノの種明かし、努力した結果の考察、振り返り。
恋愛モノでも、最初は1人で、出会いがあって2人になって、そして結婚式で大勢になる、みたいな。

 

でも大勢の前で発言したことが無い、そんな経験をしていない慣れていない管理者なんかはなんとか想像で書かざるを得ません。

 

要点は ”スピーカーである” ということ。

 

当事者の発した言葉は対象がぼやけています。”誰か” ではなく ”みんな” なので伝えることは抽象的で言葉の守備範囲が広い表現をします。
説得力もあまりありません。
一人がみんなに話すので、話している人は、それはそれは労力を伴います。
対して聴いている ”みんな” はどうかというと、よっぽど興味のある内容でない限り基本アクビをしてしまいます。

 

2人会話でも互いの温度差は生じますが、”みんな会話” はその乖離がもっと顕著なのです。
故に伝えたい事と伝わることが比例しません。

 

 「みんなの前でちゃんと言ったのに〜!」
 「え〜聞いてなかったよ〜」

 

ここから矛盾と葛藤と勘違いが生じます。

 

余談ですが、パブリックスピーキングのうまい人は話の端々に必ず具体的な個人を巻き込みます。
振られたみんなの中の1人は迷惑千万なのですが、これを行うと場に緊張感が走り、みんなが話を真剣に聞いてくれます。

 

”みんな会話” は同じ目的で集まっているにも関わらず、思惑が全く違っていても自然に写ります。
物語とは そんな矛盾を描くことなので大いに役立つ状況なのです。

 

 

状況は同じでも会話はコロコロ変えられる

 

このように喋る、話す、会話するにしても 1人、2人、みんな と大きく分けて3パターンあるのです。
実際にシナリオを書いていていちいち意識しなくてもいいですが、知っていて損はないのです。

 

そしてこの会話3パターンは、物語を創作するにあたって非常に便利に使えるのです。

 

この発想は無限大です。

 

1人の時に、写真立ての相手に喋りかけている状況は1人でも2人会話です。モノローグではありません。
でも写真の前から離れたら、「お腹減った・・・」と独白するかもしれません。1人会話に戻ります。

 

2人の時、恋人同士が何も喋れずにうつむいたままで言いたい事を心の声で言う時は2人なのに1人会話になります。
よく見かけますが、年寄り同士の2人がお互い喋りたい話題を勝手にベラベラ喋り合って全く相手の話に興じない、全く歩み寄らない会話は2人会話でもやっていることはただの独白に過ぎません。

 

みんなと一緒の時、リーダーが最初に決めた事をみんなに話して出発したら誰もリーダーと話さなくて 
 「ちぇ!俺が決めたのに」
とぼやけば、初めはみんな会話で、そのあと1人会話になっています。

 

このように状況、人物は同じでもその場その場でコロコロと会話の種類が時間経過とともに変動します。

 

セリフを考える時に行き詰ったり 「面白くない」 と感じたらこのように会話の種類を変えてみます。
そうすると意外にも発想の広がりを見つけられるのです。あんまり複雑にすることはないと思いますが。

 

そしてこれは演出手法のひとつです。
管理者はシナリオを書きながら 「こりゃ演出も知っておかなければ書けね〜や」 と感じて調べたところ紹介されていました。
本来は演劇の舞台でのシーンの区分けとして解説されていました。

 

ですのでこれはセリフに限りません。脚本的にはト書きだってこういう3パターンを分かっていて構成するべきなのです。

 

あまりこのサイトの本文では例題を載せたくないのですが・・・皆さんのイメージが例題に引っ張られたくないので。
あえてひとつ。

 

※中学生のヨシオくんは、大好きなケイコ先生の授業を教室で受けています。
ケイコ先生の講義は ”みんな会話” 状態です。
ヨシオくんは講義なんかそっちのけでケイコ先生に見とれています。 ”1人会話” 状態です。
ヨシオくんの頭の中はケイコ先生と仲良く2人でイチャラブしています。妄想 ”2人会話” 状態です。
ボケッとしているヨシオくんをケイコ先生が見つけて問題の解答をヨシオくんに指します。

 

 ケイコ先生「ヨシオくん、この問題の答えは?」 一瞬、”2人会話” 状態です。
 ヨシオくん(リアルに戻って)「は、はい!先生はいい香りがします!」

 

ヨシオくんは ここでみんなの前で解答する ”みんな会話” 状態に置かれました。
クラスのみんなが爆笑します。
ヨシオくんは恥ずかしくて顔が上げられなくなりました。 ここでヨシオくんは ”1人会話” 状態になりました。

 

いかがでしょうか。コロコロ変えると面白くなりませんかねぇ。

 

キャラクターに何か変化を持たせてみたい時にやってみてください。

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