「リズと青い鳥」から読み解くシナリオ脚本スキル

リズと青い鳥|シナリオスキル|心が動く仕組み

今回のお題は

 

「リズと青い鳥」から読み解く心が動く仕組み、です。

 

いわゆる人は何を見たら感動するのか、ということです。

 

ぶっちゃけシナリオの本質、核心に迫ってみたいと思います。

 

その引用に耐えうる作品が今回ご紹介する「リズと青い鳥」です。

 

京都アニメーションが作った劇場版アニメですが、けっこうヒットしたので見た方も多いと思います。

 

作品のイントロダクションは感化されたそこらの人たちがネットで詳しく言っていますので私が言う必要はないでしょう。

 

2018年に公開されました。

 

山田尚子監督と脚本、吉田玲子さんの“けいおん!コンビ”で、武田綾乃さん原作「響け!ユーフォニアム」の劇場版スピンオフ作品です。

 

「響け!ユーフォニアム」本編ではヒロインの黄前久美子を中心とするお話しでしたが・・・

 

スピンオフのこの作品は久美子たちのいっこ上の先輩である鎧塚みぞれ(よろいづかみぞれ)と傘木希美(かさぎのぞみ)との関係性を描いた物です。

 

舞台は本編と同じ北宇治高校吹奏楽部です。

 

スピンオフではありますが舞台設定などが共通しているだけで中身はほぼオリジナルであると言えるでしょう。

 

タッチも色も違います。

 

この作品が凄いんです。

 

何が凄いって、それは今回のお題のとおり、人の心ってどうやったら動かせられるのか、を率直に描かれているからです。

 

見ると答えが載っています。

 

それではとっととシナリオの考察に行きましょう。

 

タイトルの「リズと青い鳥」とは作中に登場する童話です。

 

その童話になぞらえる形でみぞれと希美の関係が描かれています。

 

童話自体はそんなに凝ったお話しではありません。

 

世界のどこかに実在する童話かな?と思いちょっとだけ調べましたがどうやら武田氏のオリジナルのようです。

 

このような童話や伝承、神話などの劇中話を挿入して例えとして見せる手法は珍しくありません。

 

アニメではよくあるパターンではあります。

 

ですがこの作品は普通の引用パターンと違う点があります。

 

よく見る通常パターンは引用される物語に対して主役など主要人物がマネしたりして近づきます。

 

お話しの主役は引用されている物語の主役と自分を重ね合わせたりして価値観を共有したりします。

 

「リズと青い鳥」ではみぞれと希美の親友関係というベースがあって、2人の存在がいて、その比喩として童話が作られています。

 

「逆」なんですね。

 

この「逆」というのが今回のキーワードです。重要ですので覚えておいて下さい。

 

無論、劇中ではリアルであるみぞれと希美がいて、架空の童話(吹奏楽コンクールの課題曲にまつわる童話)があるという描き方がなされています。

 

みぞれと希美、リズと青い鳥の少女、ともにこの2人の関係はとても似通っています。

 

好きという理由で一緒にいたい=囲むもの、

 

好きという理由で飛び立たない=留まるもの、

 

みぞれと希美の、どちらがリズで、どちらが青い鳥の少女なのでしょうか。

 

この2組はともに相手のことをとても大事に想っています。

 

相手の幸せを心から望んでいます。

 

劇中、こんな描写があります。

 

“みぞれがリズで、希美が青い鳥”

 

当初はこのように感じていたみぞれと希美でした。

 

それが事実は「逆」であることを悟ります。

 

出ました「逆」。

 

その悟りとは相手の幸せを本当に想うなら、

 

囲むのを止めて解き放つ、

 

想いを受け止め飛び立つ、

 

でした。

 

スミマセン、あまり上手く表現出来ませんが要するに・・・

 

表面的(行動や言動)と精神的(想いや気持ち)が「逆」になる、ということです。

 

また出ました、「逆」です。

 

結論。

 

つまりつまり、人の心とは、見た目、聞いた目のような行動と、思考、思いが逆になるときに活性化するのです。

 

極カンタンに言えば、嬉しいのに泣いているとか、

 

悲しいのに笑っているとか、

 

観測による本来の伝わるべき意味と内面的な気持ちですね、目には見えないメンタルの意味に乖離があると、または乖離していることを認識すると人は感動する・・・

 

つまりは心が動くのですね。

 

理屈ではありますが、思っている事とやっている事の整合が取れていなければ取れない理由が必要になります。

 

思いと行動の間に理由や訳というものを挟む余地が生まれるのです。

 

整合性が取れていれば理由や訳の割り込む余地はありません、至って普通のことです。

 

でも整合性が狂っていたならば、狂わす原因というものが必ず存在するのです。

 

この原因や理由に本心を当てはめます。

 

原因があれば考えていることとやっている事に差が生まれます。同じにならないのですね。

 

差というか、むしろ「逆」の関係になるのです。

 

人はこの隠れた本心を読み取ると、必ず心がざわつくように出来ているのです。

 

話飛びますがたまたま昨夜見たテレビドラマなんかは最悪でした。

 

腹が立ったから、ムカついたから行動として“怒る”では見ている人の心は動かないのですよ。

 

絶対に動きません。

 

もう10秒見ただけで「つまんないシナリオ」と感じてしまいました。

 

話戻します。

 

結局リズと青い鳥の少女は離れてしまいました。でも心は今まで以上に繋がりました。

 

繋がったのですがしかし、「リズと青い鳥」の結末はふたり一緒にいられなくなるのでハッピーエンドとはなりませんでした。

 

悲しいお話しとして終わります。

 

ですが主人公のふたり、みぞれと希美は思春期の過程としての自立を通してふたりの心の距離はもっと近づくことが出来ました。

 

最後のテロップに“dis joint”と書かれた文字の“dis”にバッテンがつきます。

 

これでハッピーエンドとなります。

 

いかがでしたでしょうか、わざと抽象的に読み解いたのでこの映画、見たくなったでしょ。

 

そうなんです。

 

この「リズと青い鳥」はあなたが実際に見て、そして実際に感じとって欲しい逸品なのです。

 

とても繊細な作品です。

 

ある意味、シナリオの答えがここにあります。


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