のうりん|シナリオスキル|アニメとギャグや下ネタ

今回のお題は

 

「のうりん」から読み解くアニメとギャグや下ネタ、です。

 

今回のこのお題、正直どうしようかと考えました。

 

なぜならばいつもこのコラムで紹介する作品は一定の品質というか、世間一般的に言えば行儀のいい作品をあえて選んでいたからです。

 

無論、品格も考慮しています。

 

だから極端にエロい作品や品のない描写の作風のものはあえて取り上げませんでした。

 

まあ、中学生男子に受けそうなこの「のうりん」みたいなコンテンツもアニメでは常套で、どちらかというとこっちがメインみたいな側面も現実的にありますから紹介しようという気になりました。

 

それでも「のうりん」の題材は“農業”なので品のない作品でも理解が及ぶ・・・かも知れません。

 

そして品のなさ、エロさとはシナリオと切っても切り離せない関係にあります。

 

白鳥士郎さんのラノベ原作モノです。

 

アニメ版は2014年に発表されました。

 

監督は大沼心さん、シリーズ構成は横手美智子さんです。

 

大沼監督といえば、やっぱりSILVER LINK製です。

 

新房昭之監督系の方ですが近年はもうそう言われないくらいの地位を獲得されていますね。

 

横手美智子さんもこんなシナリオをやるんだ、と思ったこの「のうりん」です。

 

岐阜県の片田舎にある農業高校が舞台です。

 

ジャンルで言えば農業系学園ラブコメディ、だそうですがなにせ冒頭から下ネタ全開で始まります。

 

ギャグ、下ネタ、パロディが中心に描かれますが、何気にリアリティもちゃんとあって紹介する気にもなったのですがぶっちゃけ普通の人が見たら確実に引きます。

 

でも人気あるんですよ、こういった作風は。

 

特にラノベやその派生のアニメでは。

 

うっかり可愛いキャラデザだから、予備知識もなく見てみるといきなり脱ぎ出したりします。

 

それはそれなんですが、別に脱がなくてもそういった男の妄想を描写することはシナリオにおいても必須なんです。

 

近年は腐女子好みも顕著になってきましたので男女関係なくなりました。

 

つまり、女の子のスカートがヒラヒラする描写による妄想とは、パンツが見えるかも知れないという男の色欲によるものです。

 

それは好むと好まざると人の本能です。

 

シナリオは普遍性を描く物なので当然性欲も描かなくてはなりません。

 

その程度や分量は作者によりますが、好きならいっぱい書けばいいですし品がないと思えば品のある加工をすればいいだけです。

 

シナリオ的に下品な描写やエロは使えます。

 

エッセンスに最適です。

 

さらに人ってこういったジャンルに敏感です。

 

好きなら笑えますし、嫌いなら極端に嫌悪します。

 

でも人ならば、見せる見せないはありますが基本的に大好きなジャンルです、エロって。

 

だからバランスや場面の箸休めでもこういったエロを使った“遊び”が大変有効なんです。

 

それもアニメは基本デフォルメなので面白い部分だけ拡張して後は描きません。

 

“ラッキースケベ”という言葉がアニメをはじめ二次元コンテンツには存在します。

 

その意味とは偶発的な事象、例えば事故的に人にぶつかってしまうようなことによって結果的にエッチな行為に繋がるというものです。

 

難しく言い過ぎました。

 

要するに、男の子が女の子にぶつかって倒れたら男の子が女の子の胸に手をついてしまった、というもの。

 

不可抗力ですがおっぱいを触られた女の子は顔を赤らめながら男の子を睨みます。

 

男の子は釈明しますがそんなことお構いなしに女の子は男の子を張り倒します。

 

これでギャグが成立します。

 

こうして書いてみるとホントにくっだらないのですが、それが楽しいのです。

 

そして二次元ファンの人は大好きなんです。

 

でも実際に実写でやらせてみるとけっこう笑えません。

 

倒れるほど衝突したら怪我をします。

 

スケベ以前に心配します。

 

ギャグとして成り立ちません。だから面白いところだけ抽出できるアニメ特有の演出なのです。

 

話戻します。

 

「のうりん」の導入部は農業とまったく関係ない描写から始まります。

 

ヒロインのひとり、木下林檎(アイドル名・草壁ゆか)のステージから始まります。

 

このアイドルが突如タレントを辞めて主人公、畑耕作のいる田茂農業高校に転校してきます。

 

なぜそんな急展開になったのか。これだけ聞いても興味そそられます。

 

主人公の畑耕作とヒロインで元アイドルの木下林檎、耕作の幼なじみでもう1人のヒロインである中沢農(なかざわみのり)と農業の専門家みたいな過真鳥継がメインキャストでお話しを引っ張ります。

 

この作品を見てみると農業というものがちょっと分かります。

 

意外と農業について知りません、我々は。

 

なぜ大豆が珍重されるのか、なぜコシヒカリが倒れやすいのか、そんなことも作品を通して教えられます。

 

私たちは日々食べることをします。

 

でもその生産には興味持たなくとも生きていけます。

 

そんな大事なことも知らないままでいいわけありません、本当は。

 

それをギャグやらエロやら交えながら面白く加工して教えてくれるのがこの作品のいいところです。

 

農業にまつわるいろんな要素をエピソードとしてありますが特に私が面白さを感じたのが商売のお話しでした。

 

作った作物も売ってお金に換えなければなりません。

 

作る技術と一対で売っていかねば農業として成り立ちません。

 

その話の前に、面白さと言えば田茂農高のクラス名も工夫が凝らされています。

 

耕作の在籍しているクラスは2年A組ですが、本来区分けでしかないこのAとかBに意味があります。

 

A組のAとはAgriのAです。つまり野菜や果物などの農作物です。専攻学科として家畜も入っています。

 

B組のBとはBioのBです。つまり細菌学です。乳酸菌や発酵、微生物に関する学科です。

 

だからクラス委員長のバイオ鈴木は“発酵”と“腐る”を掛けて腐女子設定になっていますw

 

E組はEngineering、つまり園芸です。

 

F組はForest、つまりは林業です。

 

このように洒落が効いていてそのクラスに属する学生の個性を表しています。

 

その中でD組が面白かった。

 

D組のDとはDistribution、つまりは流通です。

 

このD組のクラス委員長、マネー金上の主導したマーケティングが実に本質を描いていて面白いのです。

 

マネー金上は学校でリアルビジネスをやってのけます。それも停学になるほどw

 

商品のブランディングやマーチャンダイジングなども具合的に描写されていました。

 

これって本当に商売の本質を突いていて、それをギャグチックに描く物だから面白くて仕方ありませんでした。

 

「のうりん」の作品本質はそのギャグセンスとは裏腹にいたって真面目な題材です。

 

でも真面目な事柄を現実的に、リアリスティックに見せても面白くないし、NHKみたいで退屈になります。

 

それじゃ伝わらない。

 

だから下ネタやギャグを交えて、それを比喩媒体として、フィルターとして解りやすく農業を描いています。

 

だから下ネタ満載だから、エロいからと言って、それだけで終わっていない作品もあるのですね。

 

さすが大沼心監督は携わるコンテンツを見抜いています。

 

ちなみに絵師の切符さんは家族から「参加する作品を選べ」と言われたそうですが実はこの作品は普通に当たり前のことをテーマとしています。

 

我々の食べ物について語っています。

 

そこを見抜かなければなりません。

 

ギャグについてもうひとつ。

 

斎藤千和さんというメジャーな声優さんがいます。

 

「のうりん」では戸次菜摘として耕作の担任教師役を演じています。

 

通称“ベッキー先生”なのですが、これがキレ役です。

 

斎藤千和さんというと、アニメに精通しているファンに「声優は誰のファン?」なんて聞くと挙げられる名前です。

 

その役柄は「化物語」の“戦場ヶ原ひたぎ”のようなクールビューティなキャラクターです。

 

そんなカッコいい印象が下ネタとギャグでブッ飛んでいます。

 

そういう意味で“キレ役”なのです。

 

キレていますw

 

この役、よく引き受けたな、と思いました。

 

さすが大沼心監督作品、だからこのコラムでも紹介しました。


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