冴えない彼女の育て方♭(第二期)|シナリオスキル|やっぱりリアルは面白い
今回のお題は
「冴えない彼女の育て方♭」から読み解くやっぱりリアルは面白い、です。
“さえないひろいんのそだてかたふらっと”と読みます。
以前紹介した「冴えカノ」の第二期です。
同じタイトルの第二期なんて、最初は考察する気にもなっていなかったのですが、見てみたらけっこう良かったのでその気になりました。
実は第二期ってちょっと注意が必要と考えます。
なぜならばクオリティにおいて、たいがい第一期を超えられず期待外れだったり、焼き直しに終わる場合が多いからです。
第一期ほど拡張性やワクワク感がないのです。
第一期を見ていれば世界観やキャラクターの性格などは知っています。
そのベースというか、基礎知識を踏まえて更なる昇華を期待するのがユーザーというものです。
結果、いまいち感が拭えません。
でも上手く昇華させてお話しが面白くなっているケースもあります。
そうですね〜
ラブライブ!のファーストシーズンのほうは成功例だと思います。
サンシャインのアクアじゃなくてミューズのほうですね、あれは第二期までちゃんと設計されていました。
第一期でその作品の“テンプレ”は提示されていますので、その踏襲はそれでいいとして、
それでいてなおかつ更なるお話しに要求が多くなって然るべきなのが第二期とか、“映画化”とかもそうですが続編の宿命です。
冴えカノについて、前回第一期の紹介では「キャラクターの性格設定」などを説きました。
キャラクターの個性をどのように描くのか、
タイトルにもなっている「冴えないヒロイン」加藤恵をそれこそイメージキャラクターとしてゲーム作りするお話しなので、それにちなみました。
さて、その第二期はどうなっているのか、というと・・・
リアリティ面、葛藤面において上塗りされていました。
冴えカノの特徴として業界ネタがあります。
アニメや同人誌、出版などの制作者にとっては自分たちが日々仕事を通じて接している世界なので至って日常だと思われますが、視聴者は知らない世界です。
だから出版の話や同人誌の業界話など、よりリアルな描写が面白さを演出していました。
ま、それはエッセンスとして・・・
本題はこれです、葛藤面。
これはかなり踏み込まれていました。
最近のアニメ作品を見ていてとても感じるパターンがあります。
どうなっているのかというと、
まずキャラクターの強い“意思”や“希望”が存在します。
キャラクターの方で勝手に、当たり前に感じているものです。
誰かが好き、とかこんなことを絶対にやり遂げたい、とか。
それに対してその意思と同じかそれ以上の“譲れない要素”を持って「否定」せざるを得なくなる、というものです。
この場合、必ず「否定」です。
妨げられます。
それも今回の“冴えカノ2期”ではキャラクター別、ステージ別で描かれています。
絵描きの澤村・スペンサー・英梨々は主人公安芸倫也が満足する最高傑作を描ききりますが燃え尽きてスランプに陥ります。
そこから抜け出せたのは英梨々の共感する倫也の存在ではなく、気に入らないステージ上位者の高坂朱音でした。
シナリオライターの霞ヶ丘詩羽はメジャータイトルのゲームシナリオを任される代わりに英梨々の引き立て役という本意でない役割をあえて引き受けます。
元々この二人は倫也の主催するゲーム制作とは全く異なる上位ステージで活躍できるポテンシャルがありました。
いわゆるプロ級です。
そんな人間が倫也と行動を共にしたかった理由、それは倫也への「憧れ」だったり「依存」でした。
第一期まではそれでも完成できました。
完成して成功も収めることが出来ましたが元から不釣り合いな関係性もありました。
倫也は次の企画にも同じ布陣を望みますが英梨々と詩羽には業界が許さなかったのですね。
実力相応のオファーがきます。
その高みへ行くことも、連れて行くことも倫也にはできません。
感情に任せて今のステージでやるか、プロフェッショナルを目指して更なる上のステージを目指すか、
この葛藤に英梨々と詩羽は悩みます。
でも答えは当人たちも自覚できています。
どうするべきか、本当は分かっているのです。
感情的に望まないとしても進むべき正しい道が見えています。
こんな感じで本人の希望と行動とが別になっていく様が描かれているのが第二期でした。
ところでステージって、さっきから言ってますがお分かりでしょうか。
これは我々の日常リアルでも同じ事が言えます。
会社員ならば試採用から始まって平、管理職、役員、経営者・・・みたいな、
それぞれステージが違います。
仕事内容も報酬も変わっていきます。
人は元から高みを目指すように出来ています。
簡単に言うと「今よりもっと上」を目指しながら生きる生き物です。
「今より上」に価値を見いだします。
それは自身の「好き嫌い」とはあまり関係ありません。
無論、感情優先にする仕事だってあります。特にクリエイター職は表面化します。
それでも大きな流れに乗らなければ大成しないことを我々は知っています。
大きな結果を求めるには自分の嗜好なんて優先している場合じゃありません。
これがリアリティです。
英梨々と詩羽の葛藤は我々でも直面している“現実”なのですね。
だから面白くなります。
冴えカノの第二期は、このように現実感を拡張して構成してありました。
倫也は自分の力の無さを思い知らされます。今までの当たり前が、実は恵まれていたことを自覚します。
メインヒロインの加藤恵は第一期ではあまり見せなかった感情を爆発させます。
これが面白い。
恵はクリエイターではないので倫也と同じ目線で寄り添い葛藤します。
キャラクターそれぞれ自分の立っているステージというものがあります。
第一期では同じステージで上を目指していましたが、第二期ではより現実リアルに即した形、それぞれがそれぞれのステージで高みを目指しています。
冴えカノ第二期ではハッキリ示されていました。
それは決してフィクションではなく、私たちと同じ境遇だったりします。
あなたは今、どのステージに属していますか?
この先将来、どうやってそのステージを上げていこうとお考えなのででしょうか。