ガンソード|シナリオスキル|恨みの晴らし方
今回のお題は
「ガンソード」から読み解く恨みの晴らし方、です。
2006年のもう古い作品です。
監督はヒットメーカーの谷口悟朗さんで脚本は大御所の倉田英之さんでオリジナルアニメです。
お話しとしてはいわゆるロボット物なのですが、それはモチーフなので本質的なことを言えば
「怨恨もの」です。
主人公のヴァンは結婚式で悪役のかぎ爪の男に妻となる女性を殺されました。
その恨みを晴らすためにかぎ爪の男を追い続けるといったものです。
ヴァンはかぎ爪の男を殺すべくほうぼう探し回る旅をしていく物語ですが、
シナリオ的に面白いところは、その末に成し得る「恨みの晴らし方」です。
実はガンソードで面白いと思ったところは主人公のヴァンだけではありません。
ヴァンは妻の敵を取るべくかぎ爪の男を殺すことに執念を燃やします。
これは普通ですね。
殺した相手を殺す。
至って単純な仕返し方法です。
特筆したいのはサブキャラクターのレイ・ラングレンの方です。
レイはヴァンと同じ境遇で妻となる人をかぎ爪の男に殺されました。
ヴァンと同じ目的でかぎ爪の男を追い求めますが別行動です。
このレイの恨みの晴らし方がヴァンとは違います。
物語の最後の方までレイもヴァン同様に敵を殺す目的と思いきや、そうではない描写がされています。
レイは妻を殺されて自分が味わった、
「絶望感」 をかぎ爪の男に与えます。
レイはかぎ爪の男の命をかけた野望を邪魔することに成功した後に敵に殺されてしまいます。
レイの恨みの晴らし方とは殺された妻と同じにするのでは無く、自分の味わった絶望感で仕返ししたのです。
その目的を果たせたレイは満足げに死んでいきますが後にたった40分程度計画が遅れただけでしかありませんでした。
その遅れで主人公のヴァンが目的を果たします。
恨みの晴らし方に差があるのです。
これが面白いと感じました。
普通は被害者と同じ境遇にしてやろうと考えます。
殺されたから殺してやる的な。
レイはそうしませんでした。
あくまで自分基準で判断しています。
この視点の違いに面白さがあります。
恨みの晴らし方にも、このように選択できる余地があるのですね。
もう一つガンソードではシナリオ的に面白いところがあります。
それはキャラクターのネーミングです。
ヴァンの旅に同行するヒロインがいます。
その子の名前は「ウェンディ」といいます。
このネーミングがとてもマッチしていて面白いと感じました。
ウェンディと聞くとあのピーターパンのウェンディではないでしょうか。
元気がよくて活動的でおてんばな印象があります。
設定もピーターパンのウェンディに近くなっています。
12、3歳の少女です。
特にキャラクターデザインの髪形に特徴があり、名前を支えています。
ぶっきらぼうなヴァンのお供役としてどんなヒロインを設定するのか、ということではドンピシャ的なネーミングでキャラクターにあっている名前になっています。
やはりシナリオの登場人物で特徴的で象徴的な名前は必須なんだな、と感じました。
つまんないネーミングは避けたいものです。
あと、サブキャラクターで大人の女性で情報屋が登場します。
その名前が
「カルメン99」 なんですね。
実名でなく呼び名なんですが、それにしても一度聴いたら確実に印象付けられます。
かるめん きゅうじゅうきゅう、ですよ。
99までくっついていて、これでもかというほど聞いた人の印象に残ります。
このようなネーミングをすると
「この名前ってだれだっけ?」なんてことになりません。
このような工夫がシナリオを描く場合においても必要な要素なんですね。
あと改めて見て気がつきましたが、制作は仕上げ会社のAIC A.S.T.Aなんですが・・・
この時代のアニメには珍しいというか、かなりCG描写が正確なんですね。
カッコいいんですよ、さすが谷口監督です。
モーショングラフィックとか、今ならこれくらいの表現が出来ても当時2000年代後半でこんな完成度あったんだ、と感心してしまいました。