「棺姫のチャイカ」から読み解くシナリオ脚本スキル

棺姫のチャイカ|シナリオスキル|魔法の使い方

今回のお題は

 

「棺姫のチャイカ」から読み解く魔法の使い方、です。

 

“使い方”とは作家的にどう使うか、ということです。

 

「ひつぎのちゃいか」と読みます。

 

榊一郎さん原作のファンタジーです。

 

アニメ版は2014年に第1期が放映されました。

 

監督は増井壮一さんでシリーズ構成は待田堂子さんです。

 

主に土屋理敬(つちやみちひろ)さんが書いています。

 

ヨーロッパ中世の世界観に魔法技術が発達した社会が架空の舞台として設定されています。

 

チャイカは同じような人物が複数存在してそれぞれ活躍するのですが、メインヒロインのチャイカは“白いチャイカ”です。

 

チャイカは、かつて大陸を武力支配していたガズ皇帝の娘とされていて、チャイカの存在は一様に目的があります。

 

討伐された際に解体されたガズ皇帝のバラバラになった遺体を集める、これがチャイカの目的です。

 

遺体を集めるので棺を持ち歩いています。

 

ヒロインの白いチャイカは“父を弔うため”として旅を続けていますが、それぞれのチャイカには別の思惑があったりします。

 

途中でカチ合えば戦ったりします。

 

で、

 

この作品では魔法が普及した世界観で描かれています。

 

ラノベやアニメでは定番ですがシナリオ的にはこの定番について考えてみましょう。

 

実はよく使われている魔法とは我々リアルの社会現象を比喩しているのです。

 

魔法、魔術、魔女、魔法少女など、“魔”がつくと、もの凄く想像の範囲が広がるファンタジー要素なんです。

 

「魔法」が単なる稚拙に写らないで収まっているのは、その使われ方がリアルライクであるから、なんですね。

 

昔の魔法モノは違いました。

 

願望や欲望や好みだったり、けっこう好き勝手に使えるような作品が多かったと思います。

 

小さい子どもの単純な願望を叶える姿を見せることで、当時のアニメユーザーである年少者の心を掴んでいました。

 

いまでもプリキュアだったり、アイカツ!などはその様な手法で続いていて、とても人気があります。

 

今時の“魔法”はかなり制約が課せられています。

 

何でもかんでも願いを叶えません。

 

その制約も我々リアル社会とリンクしています。

 

自由な世の中では、実は自由で無い、そんなところを比喩、または揶揄しています。

 

チャイカの様なアニメは大人アニメです。

 

大人が納得する魔法の使い方とはあくまでリアルライクでなければダメなんですね。

 

棺姫のチャイカの中で描かれている魔法は出来ないことを叶えるという意味は変わらないのですが、よく見てみると今の現代では魔法じゃない他の方法で叶えられています。

 

描かれている物とは

 

「力」です。

 

現代ではナンチャラ力とされているものを単に魔法に置き換えられています。

 

火力、電力、原子力や動力、推進力、思念力・・・それらを元に作られる兵器や生活道具など、

 

物語では魔法資燃料(魔法思念料?)とされていますが現代の社会で使われている石油や石炭などの燃料を一括して魔法で賄っています。

 

ビークルを動かすのも魔法だし、銃の弾丸も魔法資燃料で出来ています。

 

ただし、魔法はウィザードと呼ばれる特別な人しか使えません。

 

誰でも魔法は使えない、選ばれた人しか使うことが出来ません。

 

複数のチャイカでもウィザードだったり、そうでなかったりします。

 

シナリオ的に秩序や条件、ルールといった縛りは決めないとなりません。

 

ファンタジー要素として都合のいい設定が“魔法”なのです。

 

それもリアル社会の利便性を叶えたものを魔法に置き換えるだけであらゆる想像の拡張が出来てしまいます。

 

そしてこの魔法要素はとても受けがいいのです。

 

ファンタジーでも魔法モノは定番ながら破壊力があります。

 

それ故、安易に作られる魔法モノも多くてそのデキはピンキリなのですが、榊一郎さんはそこんところいろんな要素を盛り込んで面白くなっています。

 

やっぱりいくらファンタジーでも、空想の世界でも中で活躍するキャラクターは絶対に我々のリアルとリンクする必要があります。

 

魔法を使うにしてもやっぱり

 

“理由”

 

が必要なんですね。

 

そうしないと単なる稚拙な作品に落ちぶれてしまいます。

 

結局、魔法を使っても行き着くところは我々でも日々直面する葛藤です。

 

思うように行かない、上手くいかない、そんな現実は例え魔法が使えても必ず直面します。

 

魔法が使えても上級者もいるし、他にも使うことが出来る人がたくさんいます。

 

主人公が魔法を使えても特権では無く、むしろカセとなる状況が必ずあります。

 

特権ならば特権で与えられた人だけが返って苦しむ、といった描写が出来ます。

 

あっても無くてもとどのつまり、人間が取り扱う者であれば何を使ってもこういった普遍性に左右されるのです。

 

だから何を書いてもいいのですが、この

 

“普遍性”

 

がなければシナリオにはなり得ないのですね。

 

魔法はタダのディテールに過ぎません。

 

タダのディテールにしてもそれはとても拡張性のあるアイテムなので古くから人々に愛されます。

 

いろんな魔法のデザインができるし、使い方や考え方まで作者のイマジネーションを広げてくれるのです。

 

今、生きている世界の現象を魔法に置き換えるだけで、

 

たったそれだけで面白くない世の中でも面白くしてくれるのです。

 

人の世の進化、文明の進化とは過ぎてみれば魔法になりませんが、例えば100年前であれば今の世の中はまさに魔法の世界なのですね。

 

魔法はこういった人の歴史、経緯に由来しています。

 

だから説得力もあり、空想が空想で無い可能性があるのです。

 

魔法が将来現実化するとは到底思えませんが、魔法のようなことであれば必ず現実化するんです。

 

そうやって人間は生きてきました。

 

決してファンタジーでは無い事が分かると思います。

 

世界観に魔法が入ると本当に面白い、そんなことを感じさせてくれる棺姫のチャイカでした。


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