BLAME!|シナリオスキル|王道のパターン
今回のお題は
「BLAME!」から読み解く王道のパターンです。
2017年に劇場公開された弐瓶勉さんのコミック原作ものです。
調べてみてわかりましたが原作は1995年に始まった長編連続ものでかなり古い作品でした。
これまで何度かアニメ化されていたそうですが今回は最新版であるポリゴンピクチュア製の劇場版に絞って紹介します。
余談ですが2003年に発売された「BLAME!Ver.0.11」は関島真頼さんが書いていたんですね。
キャラデザも渡辺明夫さんで機会あれば再確認してみたいと思いました。
「シドニアの騎士」でおなじみのポリゴンピクチュア製で瀬下寛之監督、脚本は村井さだゆきさんです。
なんかNetflixの日本版初作品だそうで世界発信されたそうです。
で、
シナリオ的にはもう王道中の王道な作品です。
進化した未来社会は機械に支配されていて人が虐げられている、というもの。
そこに現れた救世主的な主人公が人々を救う、そんな感じのお話です。
タイトルの「BLAME」(ブラム)とは “責め”とか“非難”などの意味ですが、私は作品を見てみて
「誰が何を責めるんだ?」
とか思ってしまいました。
多分、たぶんですよ、
人類が利便を追求するために機械やネットを進化させたあげく、逆に戒められて責を負っている世界を描いたもの、と解釈しましたが、あなたはどう感じられましたでしょうか。
物語はいわゆる「マトリックス」の作りと同じです、何て言ったら怒られるかも、ですが確かに共通点があります。
人類、人々の社会が危機的状況にある、
特別な能力を持った救世主的人物が突如として現れる、
救世主は不完全でそれを補うメンターも現れる、
そして人々を救う・・・
主人公の「霧亥(キリ)」はマトリックスで言えば「ネオ」です。
メンター(導くもの)の「シボ」は「予言者」。
敵の「サナカン」や「セーフガード」は「エージェントスミス」といったところでしょうか。
この劇場版のヒロインになると思われますが人類側(電基漁師)の「づる」は視点の基準的な語り手としての存在です。
やはり劇場版はかなり短縮されていて原作の一部を引用した程度のようです。
本来は「霧亥」と「シボ」がメインキャストです。
この作品を見てみて率直にこう思いました。
「王道は面白いから王道なんだよ」と。
正直ストーリーテラーに真新しさは感じませんでした。
ただこのパターンは絶対に知っておかなければなりません。
なぜなら面白くなりやすいから、です。
でも使い古されているのも事実です。
よくシナリオコンクール審査員が嘆く文句にもなります。
「何の変哲もない、冴えない中年オヤジがいきなりヒーローになる話・・・」
面白くなり易いパターンではありますが注意しないとただの「陳腐な話」に陥ります。
この作品も壮大な原作があってこの劇場版があるから栄えるのだと思います。
あとやはり、映像が素晴らしいし、カッコいいのです。
ポリゴンピクチュア製のセルライクフルCGアニメーションは「シドニアの騎士」もそうですが、「アニメはここまで進化したか」と思わせられます。
この映像がこの作品の目を引くところです。
シナリオ的には至って王道、誰もが受け入れられやすいストーリーテラーに仕上がっています。
このようなパターンはハリウッドのシナリオコンサルタントであられた故ブレイクスナイダー氏も分析していました。
カテゴリーは「スーパーヒーロー」。
これはアニメやコミックでは常套手段的なストーリーパターンです。
要素としては
特殊能力者、救われる人、そしてヒーローは弱点を抱えていてたいがい敵はその弱点を突いてきます。
この要素に拡張を施します。
ディテールやガジェット、存在を支える人や物といったデザインが膨らむ要素となります。
この作品は原作の世界観が強いのでそこんところは充実していますがお話自体はとてもわかりやすく単純です。
勝負所はやはりこういったディテールやデザイン面でその点、「BLAME!」は世界発信にも耐えうる品質があります。
ちょっとシナリオ的にはデザインの優秀さに軍配が上がりますので悔しい部分ではありますが原作ものである以上そんなにいじっていいのもでも無いとも思われますので仕方ありません。
一定の王道パターンは、仕組みそのものはそのままでこういったディテールにこだわることが出来ます。
そこが王道パターンの楽しいところでもあり、難しい所でもあります。
いかにカッコよくまとめるのか、線路みたいに展開が決まっている中でどこに手を加えたらもっと面白くなるのか、陳腐な話にならないで済むのか、シンプルな故に腕の見せ所でもあります。
ヒーローって見ている人がなりたい姿、もしくは現れて欲しい架空の人物です。
その願いというか希望は普遍的要素でもありますから丁寧に描いてみると面白いものができます。
ファンタジーにおいてこういった憧れ性は人を魅了します。
ですが要素は忘れないで下さい。
ヒーローは決して完璧ではありません。完璧じゃいけません。
必ず弱点、共通性がなければただのイヤミキャラになってしまいますから。