「たまこラブストーリー」から読み解くシナリオ脚本スキル

たまこラブストーリー|シナリオスキル|恋愛経験と切り取り方

今回のお題は

 

「たまこラブストーリー」から読み解く恋愛経験と切り取り方、です。

 

2013年放映された京都アニメーションのオリジナルで「たまこまーけっと」という作品があります。

 

「たまこラブストーリー」は「たまこまーけっと」の劇場版として2014年に公開されました。

 

「たまこまーけっと」はホームドラマ、ファンタジーコメディであまり恋愛要素はありませんでした。

 

“デラ”という喋る鳥が出てくるのでファンタジーなんだろうな、と思われますが、人情商店街ものでもあり、学園ものでもあります。

 

けっこういろんな要素を詰め込んだびっくり箱のようなアニメです。

 

監督は山田尚子さん、シリーズ構成は吉田玲子さん、絵は堀口悠紀子さんで、「けいおん!」と同じキャスティングです。

 

舞台となったうさぎ山商店街は京都市内に実在する出町枡形商店街です。

 

見に行きましたがそっくりです。

 

さて、

 

本編の「たまこまーけっと」はドタバタ劇風なのですが「たまこラブストーリー」は恋愛初恋ものです。

 

ヒロインの北白川たまこと、生まれたときからお向かいに住む同い年の大路もち蔵とのラブストーリーです。

 

互いの家は餅屋同士でもち屋の娘ともち屋の息子のお話です。

 

「たまこまーけっと」本編中では、もち蔵がたまこに想いを寄せている描写がたくさん出てきますが告白には至りませんでした。

 

たまこは天然鈍感でもち蔵のことはもち屋同士の、ただの幼なじみとしか認識していません。

 

二人が高校3年生になって、もち蔵は東京の大学に行く決意を固めます。

 

たぶん夏服に衣替えする前で暖かい4月か5月の頃だと思いますが、もち蔵は東京に行く事と、自分の気持ちをたまこに告白します。

 

告白されたたまこは驚いてひっくり返り、浅い鴨川に沈んでしまいます。

 

そんなお話しです。

 

ネタはバラしません。

 

さてさて、

 

恋愛経験っておありでしょうか。

 

シナリオ的には恋愛感情という物は通常と全く違うので、そういう経験をしたことが無い人にはなかなか書けないものであります。

 

特に恋愛にも段階があって、その段階のどこを切り取って表すかがけっこう勝負の分かれ道です。

 

知識としての恋愛感情は小説やドラマなどメディアを通して知っていたり、はたまた知人友人の恋バナ等で仕入れることはできるでしょう。

 

でもなんと言っても作者自身が経験していないと実感沸きません。

 

人の感情は恋愛が絡むと本当に変化します。

 

普通じゃない反応を示します。

 

そこに面白さがあるのですが、そのような変化は恋愛独特のものがあります。

 

大御所の脚本家大先生は「恋愛経験も無い人がラブストーリーなんて書けるわけが無い」と断言しています。

 

まあ、そうですね、特に若い人でそんな経験これから、という人には想像で書けることが決まってしまいます。

 

だから大御所の脚本家大先生は(この方、男性の脚本家さんです)シナリオ解説の最後に、何かにつけて

 

「女と付き合え、たくさん付き合え」

 

「異性と話せ、話かけろ」

 

と諭されています。

 

なんか、若手の脚本家の人でもそういった経験の少ない人が目立つそうで嘆かれていました。

 

一応私はそれ相応の歳にそれなりの経験がありますので、しかも人生通じて良くも悪くも一通り経験しましたのでラブストーリーは気が向けば書けると思います。

 

自慢じゃありません、経験があれば書きやすいという話です。

 

最近、アニメですがこの「たまこラブストーリー」のような純愛モノ、初恋モノが妙に気になりましてよく見ています。

 

で、

 

恋愛にも段階があると申しました。

 

その段階において、いい作品を見ているとあまり欲張っていません。

 

ある一括りのエピソードで終わっていたりします。

 

「たまこラブストーリー」は全然これから、というところまでしか描かれていません。

 

端的に言えば「告白されて返事した」だけで映画の尺を使い切っています。

 

この「告白されて返事した」過程を丁寧に描いています。

 

京アニはこのような描写や演出がいつもとても秀逸です。

 

あまり外部の監督さんが入ってきませんのでいつも京アニ関係の監督さんだったりしますがとにかく演出が優れています。

 

ご当地アニメ製作会社にはこのような個性が存在しますが、その中でも京アニは頭ひとつ出ています。

 

告白されてその返事に至るところだけ、たったそれだけ、その部分だけ切り取ってじっくり魅せています。

 

何でもかんでも最後まで見せりゃいいというものではないと、つくづく感じてしまいます。

 

だから、もし恋愛経験が無ければ恋愛したことのある範囲でじっくり書いてみて下さい。

 

恋愛の感情を感じただけ、それだけでもシナリオは書けますし面白くなります。

 

その一瞬でも繊細に描こうとすれば、下手に長ったらしい月9ドラマより面白くなります。

 

その経験した一瞬に大きな価値があるのです。

 

シナリオの世界はいくらでも、何とでも出来ます。

 

出来事は一瞬でも2時間尺だって書けてしまいますし、そういった繊細さが絶対に受けるのです。

 

いつもこのコラムで紹介している作品は吟味していますのでオススメなのですが、「たまこラブストーリー」は業界筋でも高評価の作品です。

 

おちゃらけたデフォルメも使っていません。

 

エロい描写なんかもなく「たまこまーけっと」は正統派なアニメです。

 

正直、たまこのキャラクター像だけでも面白いお話しが作れたのでは無いか、と思いましたが、それでもデラちゃんがいたほうが愉快なのかな?

 

「たまこラブストーリー」にはあまりデラちゃんは出てきません。

 

たまこともち蔵の純粋なラブストーリーです。


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