ダーリン・イン・ザ・フランキス|シナリオスキル|テーマの見せ方
今回のお題は
「ダーリン・イン・ザ・フランキス」から読み解くテーマの見せ方、です。
2018年に発表されたオリジナルです。
監督は錦織敦史さん、シリーズ構成は錦織監督とMAGESの林直孝さんです。
キャラデザは「あの花」の田中将賀さんです。
制作元請けはTRIGGERとA−1ピクチャーズの共同になっています。
なんで共同なのか、よく知りませんが多分アニプレックス関連じゃないでしょうか。
アニメそのものはTRIGGER色になっています。
私はこの「TRIGGER」という会社に興味があります。
首脳陣やスタッフは今まで大手老舗制作会社のガイナックスにいた人たちです。
「天元突破グレンラガン」というガイナックス作品があります。
TRIGGERはこのグレンラガンを作った人たちが立ち上げた新規の会社です。
アニメ業界はこのような既存の会社に所属していたスタッフや取締役が独立して新しい会社を作ってイノベーションを図る、というケースが一般的です。
ちなみに「イノベーション」とはかなり装飾した褒め言葉であり、現実は「仕事できるなら自分たちで会社作った方が儲かる」というのが実際なようですw
ですから今現在の作品に携わるスタッフはおよそどこかの老舗アニメ制作会社出身者であったりします。
立ち上げた会社が上手くいくこともあれば、倒産する会社も多いのがアニメ制作会社の実態です。
つい先日も「プロダクションアイムズ」という会社が潰れました。
“はいふり”を作った会社ですね。
「ハイスクール・フリート」の元請けでしたが取締役は仕上げの老舗、AICの出身者でした。確かAIC ASTAだったかな?
けっこうヒットメーカーでしたがそれでも普通に潰れています。
はいふり、私は好きでしたのでとても残念です。
作画も高品質だったしお話しも面白かった。音楽もよかった。それでも経営とはあまり関係ないようでアニメを作る事が上手い人が会社経営も上手いとは限りません。
何がそんな分岐点になるのか、考えてみましたがとりあえずでも作品の品質がよくなければお話になりません。
上手くいっている会社との差、とはいろいろあると思いますがひとつはやっぱり・・・
オリジナリティだと思います。
今回紹介する「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を手がけたTRIGGERですが、そのあたりに他社との差があります。
共同のA−1ピクチャーズはオリジナリティと言うよりはマルチにこなせる会社、という印象が強いです。
アニメ制作会社を眺めてみると大きく分けて二通りあると思います。
オリジナリティか、総合マネジメントか、ということですが・・・
TRIGGERやあおきえいさん率いるTROYCA、CGIのポリゴンピクチュアズ、GO HANDSとかもそうですね。
京都アニメーション、UFO TABLEやP・A WORKSのようなご当地アニメ会社やジブリなんかもそうですが、
画やお話しなど、アニメの品質に“オリジナリティ”を特徴として自社の売りにしている会社と・・・
A−1ピクチャーズやサンライズ、J・C STAFF、ブレインズベース、東映アニメーションなどの総合アニメ制作を売りにしている会社があります。
ま、どっちがいいという話ではありませんが、TRIGGERはオリジナリティに優れていて、実績と個性のあるクリエイターがまとまって独立した会社という印象です。
グレンラガンが丸ごと独立したみたいです。
そしてTRIGGER製はやっぱり面白い、必ずチェックしなければならないと思っている会社のひとつなのです。
さて、
いつもながら前置きが長くなりましたが、シナリオ的に「ダーリン・イン・ザ・フランキス」のテーマはズバリ!
「愛」です。
ベタではありますが愛を追求するお話し、愛を探求するお話しです。
愛を際立たせて浮き彫りにするために無機質な世界観があります。
シナリオの形としては未来モノ、世紀末モノ、そしてロボットモノです。
先ほど紹介したとおりTRIGGERのスタッフはグレンラガンの制作陣ですが、そういえばTRIGGER名義ではロボットモノを作っていません。
なんか「ダーリン・イン・ザ・フランキス」が初めてだそうです、意外。
ただ、ロボットモノと言ってもサンライズ系のようなロボットモノとは違い、ロボットはあくまで媒体としての存在意義しか与えられていません。脇役・・・いや端役程度にしか扱いません。
男女一組が乗らなければ動かない設定になっていて、いわば媒体です。
このお話の面白いところは、確かに主人公のコード016“ヒロ”と叫竜の血を引くヒロイン“ゼロツー”との関係性にあるのですがテーマを表す具体的なケースを脇役に任せている部分だと思います。
男女二人を繋ながないと動けないロボット、“フランクス”に乗って敵である叫竜と戦います。
一緒にいなければならない必要性、理由があります。
ヒロとゼロツーの関係性はけっこう王道です。ゼロツーに合うパートナーはヒロじゃなければなりません。他の誰かでは上手くいかないのです。
それはリアルの我々でも同じ事で、異性なら誰でもいいと言うことはないでしょう。そんな意味合いを感じます。
そしてヒロの所属する13部隊には他にも4組のペアがいます。
これが面白いところだと感じましたが、それぞれ脇役である仲間たちに形の違う“愛”を描写しています。
片思いや三角関係、百合もあれば、主人公でもいけそうな具体的な形として恋愛、結婚、妊娠、出産を辿るキャラクターもいます。
つまりひとつのテーマがあるとして、その見せ方切り口を複数のキャストを使って見せている、ということです。
テーマってとても原始的な文言に過ぎません。
テーマ設定で原稿用紙3行も書く人はいません。
一言二言になるはずです。
その一言を具体的にするためには必然的に複数の選択が生まれるはずです。
なにもその複数の選択を全て主人公にまとめる必要はなくて、むしろこの作品のように、脇役にやらせてみていろんな形を見せる、というのもストーリーテラーとして優れていると感じられます。
メインキャストは主軸として王道を突き進み、脇役は汎用性をカバーするといった分担をするとお話し全体に厚みというかボリュームが生まれます。
主人公の行動にも脇役との差を見せることで際立ちます。
こういった演出面に長けているのがTRIGGER製の特徴です。
大塚雅彦さんはガイナックス時代から注目していました。
ご自身が監督された「ぷちぷりユーシィ」は古いですが王道のシンデレラストーリーです。とても可愛い作品です。
似たようなお名前で動画工房の太田雅彦さんという方がおられます。
太田さんの方はコメディが得意なクリエイターですが、大なんちゃら雅彦さんとつく人は才能の豊かなクリエイターなんだな〜っと思ってしまいます。
今回は制作会社の話に偏りましたがけっこう作品の特徴面において、クリエイター別ではなく、会社単位で個性を感じられるのもアニメ業界の面白いところです。
制作会社によって“色”があるのです。
そんなことも感じながらアニメを眺めてみても楽しいのでは、と思います。
今回の「ダーリン・イン・ザ・フランキス」主人公ヒロとヒロインのゼロツーは最も原則的な愛の解釈でもある「一緒にいること」を追求します。
「一緒にいること」それだけです。
主人公はいたってシンプルな意味合いにして他の選択肢は脇役に振り分けます。
この形ってとても理路整然と感じるのですがどう思われるでしょうか。
何でもかんでも、はいくら主人公だからと言って請け負えないはずなのですね。